フォント自体をリアルタイムに変形させてアニメーションを生成するのが「Poject Fantastic」だ。単純な変形から、燃えるような表現、溶け落ちるような表現、加速感のある表現などをその場で生成できる。さらに、加速度センサーとも連動して変形を加えることも可能。動画のタイトルやSNS投稿時のアクセントを想定しているかもしれないが、周囲の状況を文字で伝える際、例えば気温や風の状況を文字でアニメーション化させることでより解りやすく伝えるという用途も考えられるだろう。
3Dキャラクターが動き回るゲームやVTuberなどで必要な技術が、人物の動きをCGキャラクターに吹き込むモーショントラッキングだ。本来、関節ごとにトラッカー(大抵は白いボール)を付けて、専用のセンサーで取り込む必要があるなど、大掛かりな設備が必要だった。それを簡易化するのが「Project Go Figure」だ。スマートフォンで撮影した、背景も雑多な動画から人物だけを切り取り、動きをトラッキング。事前に用意したキャラクターのボーンに当てはめることで、動きを吹き込むことができる。リアルタイムで適用できるかは不明だが、非常に可能性のある技術と言える。
これはすごい!体に何もつけずに動画を撮影しただけで、自動的にトラッキングポイントを検出してくれるGo Figure。
— 山川晶之 (@msyamakawa) November 6, 2019
そのままキャラクターのボーンに当てはめると、動画で撮影した動きと同じモーションでアニメーションを生成できる。 #AdobeMAX pic.twitter.com/11ZlI39Rdh
この技術はかなりの驚きだ。というのも、複数の角度から撮影した写真をもとに、内部で3Dモデルを生成。写真を撮影したあとから、太陽光の位置を変えることができるからだ。この「Project Light Right」では、生成した3Dモデルを生かし、太陽光の位置を変更した際に、影の落ち方もシミュレート。建物内に入り込む太陽光もかなりリアルに再現できる。数秒間の動画からも3Dモデルを生成できるほか、さらに凄いのは、観光地などすでにたくさんの写真が撮影されている場所であれば、それだけで3Dモデルを生成。ユーザーがもし1枚しか写真を撮影していない場合でも、太陽光の位置を変えることができる。
写真のなかの太陽光の位置を自由に操れるLight Right。
— 山川晶之 (@msyamakawa) November 6, 2019
複数の角度から撮影した写真を読み込むと、3Dモデルを作成し、太陽光の位置を変えて逆光をなくしたり、夕焼けを作り出すこともできる。しかも、データは数秒の動画だけでもOKだし、同じ被写体なら別の写真でもOK #AdobeMAX pic.twitter.com/fFfcuwoKJh
Podcastなど音声コンテンツが再び活況にあるなか、録音環境は音声コンテンツで切っても切れない関係にある。特に、悩みのタネが周囲の突発的なノイズだ。それを解決しててくれるのが「Project Awesome Audio」だ。ノイズだらけの音源に、「Awesomize」と書かれたボタンをクリックするだけで、パラメーター調整なしに聞き取りやすい声に変えてくれる。効果は強力で、デモでは室内で録音したまま室外に出た音源(よりノイズを拾いやすい指向性広めPC用マイク)であっても、ノイズを除去しつつ室内外の差を感じさせない均一な音質に変換していた。
録音したときの周囲のノイズを取り除くAwesome Audio。室内外で収録した音が異なる状況でも一貫性のある質の高い音声を書き出してくれる。 #AdobeMAX pic.twitter.com/u6UKj1pDMv
— 山川晶之 (@msyamakawa) November 6, 2019
Illustratorで光源を使った表現を簡単に生成できるのが「Project Glowstick」。細長いオブジェクトに適用すると蛍光灯のような表現が可能で、そこにシャドウエレメントを配置すると、光を遮ることができる。デモでは、発光するゼリービーンズのなか、シャドウエレメント化された人物のオブジェクトを配置することで、印象的なイラストを簡単に作成していた。
ディープフェイク対策の一助になりそうな技術も発表された。それが、顔写真がレタッチされたものかを判定して、元の写真に復元することができる「Project About Face」だ。これは、写真をピクセル単位で識別し、不自然に引き伸ばされていたり、間引きされている箇所を検出するもの。加工された割合を割合で示すほか、どこに手が加えられたかをヒートマップで表示できる。この技術は、2019年6月にAdobe ReseachとUC Berkeleyが発表した共同研究をもとにしたデモで、実際に動く姿が公開されたのは今回が初となる。
アドビでは、Twitterとニューヨーク・タイムズと共同で、コンテンツの製作者を明らかにする取り組みを発表している。ディープフェイクで揺れる米国において、フェイク作成にも使えてしまうツールを提供するアドビに矛先が向かう可能性がないとも言えない。こうした取り組みを発表し、きちんとフェイクに向き合うスタンスを表明したのはアドビにとって必然だったのかもしれない。
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