配車サービスのUberが展開するフードデリバリー事業「Uber Eats」。2015年にローンチし、翌年には日本に上陸。いまでは、東京都心でUber Eatsのロゴが入ったボックスを背負った自転車の配達員の姿を見ることも珍しくない。現在世界520以上の都市で利用でき、22万以上のレストランが参加している。
Uber Eatsは発注からデリバリー完了までを平均30分で実現しているが、さらなる効率化のために実験をしているのがドローン配達だ。Uber Eatsでシニアディレクター 兼 ビジネス開発グローバルトップを務めるLiz Meyerdirk氏に話を聞いた。
——Uber Eatsが好調ですが、Uber社における位置付けを教えてください。
Uber Eatsは3年半前に開始したサービスですが、5年前に立ち上げたUber Everythingという事業部に属しています。Uber Everythingはその名の通り、プラットフォームとしてのUberの活用を模索するために立ち上がった組織で、技術、ロジスティックの専門知識、地上のオペレーションプラットフォームといった、Uberの資産の上にビジネスを構築することを目標としています。
Uberはこれまで、ライドシェアリングビジネスで成長しましたが、ここで構築したノウハウ、技術、データを見て、人を動かす以外に何を運ぶことができるかを考えました。そして、フィットすると思ったのが食べ物です。スピードと食べ物の相性は良い、食事への需要は今・その時であって1週間後ではない、これはUberが構築してきたネットワークを活用できる。そうやってUber Eatsは生まれました。2018年は80億ドルのグロスブッキングがあり、重要な事業に成長しています。
Uber Eatsの配達方法は、車、自転車、スクーターなどがあります。たとえば、香港では人が歩いて届けています。このように、様々な方法があり、効率とスピードにフォーカスしているのです。現在、顧客が注文してから食べ物を受け取るまでの所要時間は平均30分です。成功の要因は、プラットフォームとしてのUberがあるからです。
——ドローン配達の目的は、配達時間の短縮でしょうか。
Uber Eatsを次のレベルに上げるという点で、土台のデリバリーインフラで何かを変える必要がありました。ここで、空飛ぶタクシーの実現を目指して研究開発を続けているUber Elevateとの協業が意味をなすと考えました。Uber Elevateは都市の渋滞問題の解決を図るために、交通を3D(3次元)にしようとしています。この考え方をフードデリバリーに適用できると思いました。
具体的には約1年前に話し合いを始め、もっと速く食べ物を届けるために何ができるかを中心に話し合いました。同時に、ドローンで配達する食べ物に対するニーズはあるのかも考えました。速く届くということは、自宅で料理することに近く、すぐに食べ物が出てくるという感覚です。
実際に何が可能かという点では、コンシューマーのニーズのほかに、いくつか考慮する必要がありました。バッテリー技術をはじめとしたハードウェアや規制などです。Elevate側ではハードウェアコンポーネントの作業を進めて、どうやってドローンによるフードデリバリーを実現するのかを検討しました。
中でも大きかったのが規制で、連邦航空局の小型ドローンのための実験プログラム「Integration Pilot Program」(IPP)と提携しました。IPPに参加しているサンディエゴで、最初のテストをマクドナルドと開始することにしたのです。
——ドローンでどのようにして配達するのか詳しく教えてください。
現在の実験では、注文を受けて作った食事は専用のボックスに入れてマクドナルドからドローンが運びます。ただ、顧客の家の前にドローンが来るのではなく、既存のデリバリーパートナーを利用して、移動可能な中継ポイント(車の上など)でデリバリー担当が受け取り顧客の家に届ける流れです。QRコードを使ってドローンを車両に着陸させます。
顧客のメリットとして、配達時間が短縮できるので、温かい食べ物は温かく、冷たい食べ物は冷たい状態で届きます。温度だけでなく、鮮度など品質のメリットもあります。また、遠くにあるレストランでも注文できるため、レストランからするとリーチを拡大できるのです。同時に、最後は人が届けるので、その部分の体験はこれまでのUber Eatsと変わりません。ここは重要な点だと考えています。ドローンと顧客との間のやり取りなど、やるべきことはたくさん残っていますが、最優先は安全です。全てを一夜にして変えることはありません。
なお、ドローンでは遠く離れたレストランでも注文できるようになりますが、郊外に住む顧客だけでなく、都市部の顧客にも意味があると考えています。ただし、都市の場合、ドローンをどのように着陸させるのかなど、まだ考えることがあります。
——商用サービスの開始の見通しは。
いくつかの条件がそろう必要があります。まずは規制です。テストする場所にもよりますが、規制側との作業を進めています。
次に、ハードウェアとドローンインフラが整う必要があります。技術そのものに加えて、食べ物を入れる箱も、食べ物の大きさ、温かいものか冷たいものかにより異なるペイロードボックスが必要です。また、チャージのためのステーションも改善しなければなりません。そして、3つ目として顧客にドローン配達について知ってもらい、使いたいと思ってもらうことも大切です。
このように、流動的な部分がたくさんあります。まずはサンディエゴで実験をスタートしますが、商用サービスの具体的なタイミングは未定です。継続的にテストを行い進捗が見えた時点で、コンシューマーがオーダーできるように調整します。フォーカスするのは、品質、信頼性、安全性です。
——Uber Eatsがレストランビジネスを変えているという意見があります。また、キッチンだけで顧客がいない“ゴーストレストラン”という言葉も生まれています。
レストランパートナーとは対話を継続しています。Uber Eatsには、22万以上のレストランが参加していますが、実に様々です。デリバリーがメインになって顧客があまりいないというところもあります。レストランも進化しています。これは今に始まったことではなく、1960〜70年代にファストフードやドライブスルーが登場した時は、テーブルに座って食べないレストランの形態は大きな変化だったはずです。
技術が要因の1つとなり、消費者と食事、レストランとのやり取りや関係が変わりつつあります。それと同時に、フードデリバリーにより、食べ物に関わるビジネスも増えています。ドライブスルーと同じように、フードデリバリーもレストランのあり方を変えるでしょう。デリバリーのみでスタートするところも増えていると聞きます。このトレンドを感知して投資する動きもあります。
フードデリバリー市場は今後も成長するでしょう。人々は便利さを求めています。Uberは継続してUber Eatsに投資し、顧客のニーズにあうように、さらなる便利さを実現していきます。便利さに慣れてくると、さらなる便利さが欲しいと思うようになり、そして利用増につながります。Uberに入社する前、Uberの便利さに感動して利用していましたが、利用できる車が増えシステムの信頼性が改善すると、さらに利用頻度が増えました。フードも同じで、信頼性が改善するとさらに成長すると思っています。
——Uber Everythingの最初のプロダクトがUber Eatsとのことですが、今後フード以外のUberプラットフォームの活用計画はありますか。
たくさんのアイデアがあります。すべてを公の場で語っていませんが、継続的にプラットフォームとしてのUberを利用して何ができるかを考えています。技術と物流、地上のオペレーションでUberが構築してきた専門知識があるので、どこにどうやって活用できるのかを考えているところです。
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