ドコモ吉澤社長、他社の“4年縛り”に「襟を正すべき」--5Gや決済競争を語る - (page 2)

 違約金の上限に関しては絶対値のロジックが全くなく、アンケート結果によるものだというので、そのように要請されたらそう対応せざるを得ないでしょう。ただ、それをやろうとするとなると、2年契約をしてもらう代わりに月額料金を1500円値引き、中途解約すると9500円(の違約金を)引いているという現在の料金プランの仕組みが崩れるので、1500円の値引きはできなくなる。

 現在料金のシミュレーションを進めているところですが、私としては値上げはなかなかやりにくいと思っています。ただ、ロジックでいえば本来得られる収益が保証されないので、料金に何らかの影響が出るでしょう。とはいえ、(新規参入の)楽天モバイルがどのような料金体系を打ち出してくるかを見越した上で対応する必要があると思っていて、もし次に何らかの料金修正をするとしたら、楽天モバイルの料金を見てからになるのではないでしょうか。

——もし違約金上限が1000円になっても料金を下げないとなれば、それは御社が損を被るため、業績に大きな影響が出る可能性もあるように思います。

 既存の料金プランの違約金は9500円のままですし、年内に解約される回線のほとんどは既存のプランでしょうから、2019年度の業績に影響が出るという心配はしていません。一方で、端末の値引きが2万円という限度が付いたことで、今までキャッシュバック目当てにキャリアを乗り換え、実質0円を下回る価格で端末を手に入れる人が減るのはすごくいいこと。違約金上限だけでなく、端末購入補助にも制約が付いたことから、解約が大幅に増えるとことはないと考えています。

 ですが、より強い縛りとなっているのが、他社の“4年縛り”(KDDIの「アップグレードプログラムEX」や、ソフトバンクの「半額サポート」といった端末購入プログラム)です。端末の免除を受けるには4年の割賦で端末を購入し、2年経過後に同じキャリアの中で機種変更する必要があるので、既往契約そのものが2年後の機種変更を含め、4年間になる。そのロック効果は、通信契約の縛りよりも強い効果があります。

 この点は総務省の有識者会議でも問題視され、是正はされているもののロックの効果は変わっていない。それはおかしいんじゃないかというのが今回の制度案の趣旨のはず。既往契約だからと言って是正しないということではなく、是正して欲しいと私は言っています。

 ところがロック効果が大きいので、他社は土日などに量販店で、かなりの端末キャッシュバックを実施している様子が見られます。制度変更前の駆け込み需要を獲得するためかもしれませんが、分離プランを導入しながらキャッシュバックするというのはおかしな話で、今までの議論を元に戻してしまうのかと。我々は業界そのものの健全化を果たしていきたい。モバイルの慣習、評判を改善しないといけないと思いますし、他社も襟を正すべきだと思います。

中国メーカーの採用には慎重姿勢

——2018年はZTE、2019年はファーウェイと、立て続けに取引のあった中国メーカーが米国からの制裁を受けています。今後、中国メーカーとの関係性をどうしていく考えなのでしょう。

 (ファーウェイに関しては)米国の制限が解かれ、はっきりと大丈夫ということが明確にならないとなかなか動くことができません。既存の端末は販売や保証ができますが、新しいものはOSのバージョンアップがつつがなくできる保証がないと、対応に苦慮することになるので明確にしてもらう必要があります。そこは我々の判断だけでできるものではありません。

NTTドコモは2019年夏にファーウェイのフラッグシップモデル「HUAWEI P30 Pro」の販売を予定しているが、米国の制裁の影響から現在予約を中止している状況だ
NTTドコモは2019年夏にファーウェイのフラッグシップモデル「HUAWEI P30 Pro」の販売を予定しているが、米国の制裁の影響から現在予約を中止している状況だ

——分離プランの導入で今後ミドルクラスのモデルを増やすとしていますが、そうした価格帯に強いのは中国メーカーです。取引が難しくなることで、端末調達に問題は出ませんか。

 今のところ他のベンダーで十分対応できていますが、今後5Gなどを見据えた場合、中国メーカーも5Gの端末をたくさん出すでしょうし、その価格がどうなのか、関心はあります。ですが米中摩擦は安全保障の問題でもあり、そこは我々の調達方針の上を行くところです。そこが明らかにならないと判断することはできないので、採用できなくなるということもあるでしょう。

——QRコード決済の競争が激化する一方、最近では「7pay」がセキュリティで大きな問題を起こすなど、トラブルも続いています。ドコモも「d払い」を展開していますが、決済サービスに関する今後の考え方を教えて下さい。

 元々d払いだけでなく、クレジットカードの「dカード」もあれば非接触の「iD」もあります。決済手段は1つである必要はなく、使いやすいものを選んでもらうことを考えています。そこで重要になるのが「dポイント」の存在です。これら3つの手段はいずれもdポイントが貯まる、使えるという点で共通しており、加盟店を増やすことでdポイントの強みをアピールできます。

 そして我々は、加盟店とコラボレートして、dポイントを活用したデジタルマーケティングによる送客を進めているところです。dポイントのグループに入ることで、送客によって単価が増えるなどの相乗効果を生み出していることから、デジタルマーケティングの拡大のためにも一生懸命加盟店開拓を進めているところです。

——加盟店開拓という面でいうと、LINE Payとメルペイが設立した「Mobile Payment Alliance」(MoPA)に参画することを発表しました。自社単独ではなく、他社との協調路線を取ったのはなぜでしょう。

 決済サービスによってQRコードを変えなくてはいけないというのは手間ですから、同じQRコードで複数のサービスが使えるという取り組みはやっていくべきだと思っています。効率化するための動きには、どんどん乗っていきたいですね。

 一方で、こうした店舗網の陣営はいくつかの陣営に分かれると思っています。今はキャッシュレス決済の取り組みが始まったばかりであるため“ペイ”が乱立気味ですが、今後は共通化が必要ですし、いくつかの事業者が統合する動きも進んでいくのではないでしょうか。

NTTドコモはLINE Payとメルペイが設立したMoPAに参加、3社の連携によって加盟店拡大を推し進めていくこととなる
NTTドコモはLINE Payとメルペイが設立したMoPAに参加、3社の連携によって加盟店拡大を推し進めていくこととなる

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