アドビといえば、PhotoshopやIllustratorなどを中心としたクリエイティブツール群「Creative Cloud」が有名だが、同社は突如、Creative Cloudの旧バージョンをダウンロードできなくする仕様変更を5月8日に実施した。その結果、ユーザーからは批判の声が高まっている。
今回の仕様変更では、ソフトウェアごとに異なるものの、最新バージョンと1~2つ前のバージョンを除き、それ以前のバージョンを「認定外製品」に設定。ダウンロードリンクを消去した。サブスクリプションプランでは、Creative Cloudの前製品群にあたるCS6(Creative Suite)もダウンロードして使うことができたのだが、今ではCC製品と同様にダウンロードできなくなっている。
今回の件についてアドビ広報部に確認したところ、二つの理由を挙げた。まず、「最新バージョンを是非使ってもらいたい。アップデートすることで、最適なパフォーマンスとセキュリティ、メリットを享受できる」と語る。そして一番の理由として、「第三者の権利を一部製品で侵害していることが判明した。私たちの権利侵害のため責任を持って対応しないといけないが、ユーザーが古いバージョンを使い続けることで直接権利侵害の指摘を受けるリスクがある。それを回避するために今回の措置を執った」と説明する。
続けて、「急な変更のため、一部のユーザーにご迷惑をかけてしまい大変申し訳ないと思っている」としつつ、「今回の変更はグローバル全体の方針で決定したもの。 私どもとしては、日本のユーザーを考えるときちんとしたコミュニケーションを取りたかったが、(事前に案内できなかったのは)グローバルの方針でスタンスが決まっており、それに従った」とする。
どういった権利侵害をしたかについては「申し上げられない」としているが、海外の一部報道ではDolbyとのライセンスでトラブルがあったことが原因だとの指摘もある。なお、ドルビージャパンに確認したが、「本国からは何も聞かされていない。コメントは差し控える」との返答があった。
2019年2月にはCreative Cloudの値上げがあったこともあり、価格改定した上に旧バージョンの使用を制限した形となったため、ユーザーからはSNSなどで批判の声が多く挙がった。アドビの製品群は毎年豊富な新機能が搭載される一方で、最新バージョンで動作が安定しなかったり、UIが変更されていたり、ファイルの互換性を確保するために旧バージョンを好んで使うユーザーも少なくない。また、印刷業界などでは今もCS6を使用しているケースもあることから、影響の範囲は大きいといえる(同社によると今回の変更は日本が最も反響があったという)。
同社では、個別の案件についてはコールセンターまで相談するように案内している。
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