福岡市は2月4日、国家戦略特別区域会議において、スタートアップ支援策として、シェアリングサービスの提供に向けた電動キックボードの公道走行、留学生へのスタートアップビザの適用、「国家公務員退職手当法の特例」の活用を提案した。
福岡市では、創業特区としてメルカリ子会社が運営する「メルチャリ」の実証実験を早くからスタートさせるなど、公共交通機関とのラストワンマイルを埋める移動手段に門戸を開けてきた。今回の提案では、電動キックボードを自転車のように誰でも使える移動手段として広めたい方針だ。
電動キックボードは、海外でシェアリングサービスが先行しており、米国では2018年8月時点で26州80都市が導入済み。しかし、日本の現行法では原動機付自転車と同じカテゴリであり、利用にはナンバープレート、ウィンカー、ヘルメット、免許が必要。このためか、国内で電動キックボードのシェアリングサービスは一つも提供されていない。
一方で、乗り出し時に足で地面をける必要があったり、最高速度があまり速くないこと、GPSなどで稼働エリアを制限できることから電動アシスト自転車(=免許なしでもライド可能)と同等の安全性を持っているとし、一定の要件を満たすシェア型の電動キックボードを自転車として、福岡市では安全性を含めた実証実験を開始したい考えだ。
シェアリングサービスを提供する企業としては、割り勘アプリ「paymo」などを展開しているAnyPayが名乗りを上げている。同社では、シェアモビリティ事業に力を入れており、インドのDrivezyに3年間で100億円出資すると発表している。今回の電動キックボードシェアサービスは、コンパクトに折りたためるタイプのキックボードを使用。時速10~20km/hでの運用で、料金は1回当たり200~300円を想定している。
福岡市長の高島宗一郎氏は、2018年2月から開始しているメルチャリについて、「職場が都心部に近い皆さんがリピートで使っていただいており、観光や散策でも使われている」と現状を報告。キックボードでも同様の使い方になるとしており、電動タイプのためより楽に、市民の移動の不便を解消できるソリューションになると語る。
また、安全性でも「実際のところ自転車の方が速い。気軽な乗り物として使ってほしい」とし、「まずは福岡で、問題性がないか確認し課題があれば改善していく」と実証実験の意義を説明。会議参加者の反応についても、「皆さん好意的。電動アシスト自転車とどこが違うのか、これは同じだねと言っていただいた。感触は良い」と期待を寄せた。
福岡市では、シェアリングサービス以外にも、自動運転、トヨタと西日本鉄道が手掛けるマルチモーダルモビリティサービス「my route」の実証実験など、MaaS分野の取り組みを活発化している。高島氏は、「あえてこうした分野を集めているわけではない」としつつ、「この分野の生産性がすごく低かったと言える」と指摘する。
「電動キックボードなどは、技術的には安く作れる時代になったが、規制があり公道で走れない。また、バスや電車の多さが福岡の特徴だが、どう連携して乗るかについて課題があった。他社も含めて最適ルートを検索できるようになり、交通の生産性が上がる」とする。メルチャリや電動キックボードも、my routeの検索対象になり、ラストワンマイルを含めたルート検索が可能になる。
電動キックボード以外にも、福岡市がすでに開始しているスタートアップビザを留学生にも適用させるよう提案。これまで、一度退学してからでないと申請できなかったスタートアップビザを、在学中でも適用できるようにすることで、外国人起業家のさらなる受け入れ拡大につなげる方針だ。
また、福岡市が設立した「スタートアップ人材マッチングセンター」において、官民での人材流動化を目的とした「国家戦略特別区域における国家公務員退職手当法の特例」を活用。これは、国家公務員が5年以内に設立されたスタートアップに転職し、3年以内に復帰した場合、公務員としての勤続年数を保持し、退職手当に影響を与えないというもの。スタートアップの課題でもある質の高い人材の確保を目的としている。
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