アマゾンジャパンは12月17日、料理教室を運営するABC Cooking Studioと、商品開発や新サービスの試験などで提携すると発表した。第1弾として、同日から両社が共同企画したミールキットを発売する。今後はお互いの顧客に提携相手のサービスや商品を紹介したり、新しい形の配送サービスの実験も共同で実施する。
ミールキットとは、カットした食材類などをパックにしたもの。食材を切るなどの手間を省けるようになっており、パックに入っている食材を説明通りに調理すれば、人数分の料理が短時間で完成する。子育てで忙しい主婦や、食材を買いそろえても持て余してしまう独り暮らしの人などに好評で、全国のスーパーマーケットが様々なミールキットを企画して販売している。
アマゾンジャパンも、生鮮食料品や日用品、雑貨などを販売するサービス「Amazonフレッシュ」で、2018年2月からミールキットの販売を始めている。アマゾンジャパンのPrime Now/Amazonフレッシュ事業本部で事業本部長を務める荒川みず恵氏によると、Amazonフレッシュでのミールキット販売数は右肩上がりで増大しており、それに合わせるように新製品を発売してきたという。
今回、Amazonフレッシュで提供を始めるミールキットはすべて2人前。「鶏肉ごろごろ野菜のクリームシチュー & 根菜のマスタードサラダ」(税込1860円)、「ピリ辛ポークジンジャー & いんげんとごぼうのサラダ」(税込1980円)、「本格四川麻婆茄子 & キュウリとザーサイの和え物」(税込1580円)の3種類だ。メニューは季節に合わせて2〜3カ月ごとに更新する予定。AmazonフレッシュのサービスエリアとPrime Nowの一部サービスエリアを対象に販売する。Amazonフレッシュで注文すると、最短で注文後4時間で配達するという。
一般にミールキットというと、家事の手間を省く、簡単かつ短時間に料理を作ることに主眼を置いたものが多い。あらかじめ刻んである野菜と肉を、調味料と合わせてフライパンに入れて炒めて出来上がりというものだ。
一方、今回アマゾンジャパンとABC Cooking Studioが共同で開発したミールキットは、少し手がかかる分、一般的なミールキットではなかなかお目にかかれないメニューとなっている。これは「料理教室を運営しているABC Cooking Studioとしては、ミールキットを調理する過程で少しでも料理を覚えてもらいたい」(志村氏)という思いがあるからだという。
提供する内容も、ほかのミールキットとは少し違う。一般的なミールキットは、パッケージに刻んだ食材と調味料が入っていて、ほかに用意しなければならないものはない。一方、今回販売を始めたミールキットには、一般的な調味料は入っていない。自宅にあるものを自身で計って使う。
そして、1つのミールキットで2品の料理ができるという特徴もある。2品を作るには、同時並行で2つの作業を進めなければならない場面もある。少し手がかかる部分を残して、そこを体験してもらうことで料理を初歩から学んでもらおうというわけだ。ABC Cooking Studioは「上手くできれば、料理の美味しさを楽しんでいただける。同時に料理の楽しさも感じてもらえれば」と、3種類のミールキットの企画に込めた思いを語った。
ミールキットには、紙に印刷した簡単な説明書きがあり、それを読んで調理することもできるが、調理法をより分かりやすく伝えるためにABC Cooking Studioのウェブサイトで、作り方をまとめた動画を用意している。細かい計量や同時並行の作業など、料理に慣れていない人が不安を感じる点も、動画を見れば分かりやすい。説明書きの横にあるQRコードをスマートフォンで読み取ると、動画を公開しているウェブサイトが開く。
ミールキット発売に続いては、ABC Cooking Studioの丸の内クッキングスタジオを商品受け渡しの場として利用する実証実験を実施する。AmazonフレッシュやPrime Nowで事前に注文した生鮮食品や日用品などを、丸の内クッキングスタジオで受け取るサービスを試験的に提供して、需要などについて調査する。
この実験では、丸の内クッキングスタジオで商品を注文して、帰宅する頃に自宅で商品を受け取れるサービスの検証も実施するという。アマゾンジャパンは、実証実験で検証した各種項目や、サービスの需要などを見て、結果次第ではサービスの本格導入を検討するとしている。さらに共同で商品開発する過程で、ABC Cooking Studioの講師や生徒に試食してもらう機会を作り、その反応を商品開発に活かす計画も立てているという。
志村氏は、今後の展開について「目的別のメニューを開発、提供したい」と語る。例えば、原料を希望する消費者に向けて低糖質なメニューを、特定の食物にアレルギーを持つ消費者に向けてアレルギー対策のメニューを、介護を受けている人には消化が良い介護食をという具合に、食事に特別な目的を持っている消費者に向けたメニューを提供していきたいとしている。また「日本国内127カ所にあるABC Cooking Studioの『スタジオ(教室)』をAmazon Freshのショールームのように使っていただきたい」と、さらなる協業に積極的な姿勢を見せた。
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