ソフトバンク、都市部で28GHz帯を用いた5G 高速大容量通信の実証実験を披露

 ソフトバンクは2018年12月5日、東京の品川エリアと渋谷エリアで、28GHz帯を用いた5Gの実証実験を実施したことを発表。同日に実施された記者説明会では、品川エリアにおける実証実験の様子が披露された。

 この実験は、11月14日に、先の品川、渋谷、そして芝大門エリアの都内3ヵ所で、5Gの28GHz帯の実験免許を取得したことを受けて実施したもの。これまでにも同社では、トラックの隊列走行などさまざまな利用シーンを想定した、28GHz帯による5Gの実証実験を実施している。だが今回はそうした特定の場所や業態、サービスなどに特化しない形で、高速大容量通信が利用されることを想定した実証実験になるという。

 28GHz帯は現在の4Gで用いられる帯域よりも周波数が高い。それゆえ直進性が強く回折しないことから障害物の後ろに回り込みにくい、電波が反射・散乱しやすいといったの特性を持ち、携帯電話での利用が難しいとされている。だがソフトバンクでは、国の貴重な財産である電波を有効利用するため、実証実験で都市部における28GHz帯の伝搬特性などを調査し、ノウハウを得てエリア構築のためのユースケースを確立することを目指したいとしている。

 今回のデモでは、会場となったJR品川駅近くのホテルから450m離れた場所に5Gの基地局を設置。そこから120m離れた場所にある会議室から、4K対応の360度カメラで撮影された映像を5Gのネットワークを通じて会場に送信、端末からWi-Fi接続されたタブレットやVR用のヘッドマウントディスプレイで視聴する、テレプレゼンスを実現している様子を確認できた。

デモの概要。2つの場所に5Gの端末と28GHz対応のアンテナを設置し、Wi-Fi接続された360度カメラの映像を、基地局を経由して5Gのネットワークで送り合う仕組みだ
デモの概要。2つの場所に5Gの端末と28GHz対応のアンテナを設置し、Wi-Fi接続された360度カメラの映像を、基地局を経由して5Gのネットワークで送り合う仕組みだ
実際に用いられたアンテナと端末。現在は電波を受信するため、端末とアンテナは細かな向きの調整が必要だというが、将来的にはスマートフォンでの通常利用も可能になるとのこと
実際に用いられたアンテナと端末。現在は電波を受信するため、端末とアンテナは細かな向きの調整が必要だというが、将来的にはスマートフォンでの通常利用も可能になるとのこと

 今回は通信速度よりも安定性を重視していることから、通信速度は上り・下り共に数百Mbps程度になるとのこと。ただし同じことを現在の4Gのネットワークで実現するには、上りの通信速度が遅いため、実現はかなり厳しいとのことだ。

5Gネットワークを通じて送られた360度映像を、タブレットで視聴しているところ。時々画質が落ちることはあるものの、スムーズな360度映像を視聴できた
5Gネットワークを通じて送られた360度映像を、タブレットで視聴しているところ。時々画質が落ちることはあるものの、スムーズな360度映像を視聴できた

 またデモ会場では、映像を送信する側の会議室にいるソフトバンクの担当者が、5Gのネットワークを通じてプレゼンテーションをするという試みも実施された。映像はスムーズであったものの、音声は質が落ちるなど不安定な様子だった。ソフトバンクのテクノロジーユニット Chief Scientist室 担当課長である菅谷徹によると、ネットワークの調整を万全にし切れていない部分があることや、使用したPCの性能が低く5Gの通信を処理しきれていないこと、Wi-Fiによる通信速度の減衰などが影響していると見ている。

 ちなみに品川では、高いビルが多いことから高層階の建物をカバーすることを重視した実証実験をしている。一方で芝大門エリアは比較的低い雑居ビルが多く、渋谷は人が多いなどの特徴があるため、それぞれの特徴に合わせた実験によってデータを蓄積し、今後の5Gの展開に向けて役立てていくとのことだ。

会場から基地局のある方向を見下ろしたところ。品川では高層階に向け見通しのよい場所での実証実験になるという
会場から基地局のある方向を見下ろしたところ。品川では高層階に向け見通しのよい場所での実証実験になるという

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