「この6年間、相当大きな構造改革を行ってきた。事業を成長させながら増収を図る構造を作るのは想像以上に大変なことだったが、産業領域の特性を見た上で先手先手で事業内容をシフトできた結果だと思う」――パナソニック代表取締役社長社長執行役員 CEOの津賀一宏氏は、7年ぶりに実質ベースで増収増益を達成できた感想をこう話した。
2018年3月期通期の連結業績は、売上高が前年同期比9%増の7兆9822億円、営業利益が37%増の3805億円、税引前利益が同38%増の3786億円、当期純利益が同58%増の2360億円となった。増収増益を達成できたのは2010年度以来7年ぶり。「2010年はちょうど三洋電機を子会社化した時期。一方で、テレビ事業が落ち込み減益要因となっていた」と津賀氏は当時の状況を説明した。
今期は、車載、産業向け事業の成長が増収増益に大きく寄与。オートモーティブ事業や二次電池を含むエナジー事業などの車載事業が成長にしたことに加え、フィコサ、ゼテスの新規連結、為替影響などにより増収に結びついた。営業利益は、原材料の価格高騰や先行投資などによる固定費の増加はあったものの、オートモーティブやインダストリアル事業などの増販益と合理化の取り組みなどにより増益を実現した。
パナソニックにおける現在の事業領域は、エナジーやパナソニックホームズなどを有する「エコソリューションズ」、航空機内エンターテインメントシステムやモバイル・ソリューションズ事業などの「コネクティッドソリューションズ」、インフォテインメントシステムやテスラエナジー事業部などを有する「オートモーティブ&インダストリアルシステム」、家電や大型空調などを手がける「アプライアンス」の4つ。以前の主力事業だった家電製品の割合は「今は3割弱くらい」(津賀氏)まで比率を下げている。
4つの事業領域を、成長の牽引役となる「高成長事業」、着実に利益を生み出す「安定成長事業」、徹底的に収益改善に取り組む「収益改善事業」の3つに区分。高成長事業に位置づける車載電池は、テスラに加え、2017年12月にトヨタ自動車との提携も発表している。
「テスラがどのようなパートナーであるか一言でいうと、スピード最優先。私たちはマージンを見て、確実な計画をたてるが、テスラはチャレンジ、チャレンジ、チャレンジで、最初から理想を追い求める。そういう意味では少し異質の企業であるが、より高い目標を掲げることによって、全体のやる気を引き出している。スピード感ある立ち上げをするメーカーと呼吸をあわせてやっていくのは、難しい面もあるが、だいぶ慣れてきた。一緒に頑張ることができるチャレンジャブルなパートナー」(津賀氏)と評した。
2019年3月期の連結業績見通しは、売上高が前年比4%増の8兆3000億円、営業利益が12%増の4250億円、税引前利益が11%増の4200億円、当期純利益は6%増の2500億円と、増収増益を見込む。
引き続きエナジー、インダストリアルを持つオートモーティブ&インダストリアルシステムズが増収増益の牽引役と見ており、エナジーは車載電池の増販益が拡大、インダストリアルは車載、産業向けでデバイスの成長や半導体、液晶パネルなどの事業が増益に寄与すると予測する。
家電の割合が3割弱となったパナソニックを、もはや家電メーカーと位置づけるのは難しい。「今のパナソニックを一言で表現すると」と記者から質問が飛ぶと津賀氏は「複数の事業領域があるので、一言では難しい。ブランドスローガンに掲げている『A Better Life, A Better World』は外さない価値観だと思っている。これをどう位置付けていくのかというと、絶えず新しい領域にシフトする会社であること。お客様の新しいお役立ちにシフトしていくそういう会社でありたいと思っている。Better Worldの部分は、Better Lifeに比べて、電池など一般の方の目には見えにくい領域に入るが、目に見えないところでの効果がある。お客様からは見えにくい形になるかもしれないが、世の中の変化はそちらに行っているので、トータルで絶えず新しいお役立ちを追求し、変化し続ける会社が私たちのイメージするところ」とコメントした。
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