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料理写真の自動整理や、音声によるレシピ提案--「クックパッド」研究開発部の挑戦 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 井口裕右2018年03月29日 12時00分
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「音声×レシピ」の研究から見えた難しさと可能性

――最近では人工知能だけでなくIoTにも取り組んでいるとお話がありましたが、Amazon Echo向けAlexaスキルの開発などはこうした動きから出てきたものでしょうか。

 そうですね。クックパッドはこれまでソフトウェア=インターネットサービスを展開してきましたが、料理を楽しくするというミッションを実現するためには、ソフトウェアだけでなくハードウェアにも可能性があるのではないかとずっと考えてきました。サービスではこれまでハードウェアにはチャレンジしてきませんでしたが、研究開発としてはもちろんチャレンジできる領域ですし、スマートスピーカはそのひとつだと考えています。

 スマートスピーカは米国では主に寝室とキッチンに置かれているのだそうです。目覚ましとして使ったり、キッチンタイマーとして活用しているようです。そのような利用シーンから、スマートスピーカは料理を楽しくする一要素となるのではないかと考え、研究を行ってきました。

――テキストや画像で提供されるレシピと違うという点を踏まえて、開発で工夫した点はありますか。

 画像を見せないというのはすごく大きなポイントですよね。レシピって、テキストを読み上げられても覚えられないし、テキストだけではわからないことが多いんです。実際、開発当初にレシピを読み上げるだけの機能を作ってみたところ、(聞いただけでは)レシピの内容が全く理解できませんでした。そのとき、料理はいかに“目”に頼っていたかを理解できたのです。

 今は、Alexaスキルは検索に特化した機能を提供していて、たとえば「茄子のレシピを教えて」と話しかけると料理の候補をいくつか教えてくれて、その中から興味のある料理名を話しかけると、その料理の人気レシピをひとつユーザーのスマートフォンに送信します。単に音声でレシピを読み上げるというのはユーザーも望んでいないでしょうし、現在は音声でレシピを伝えるという機能は提供していません。


クックパッドのAlexaスキル

 一方、別のアプローチがあるのではとも考えていて、たとえばレシピの中にある調味料の分量を確認したいときなど、作り方の中で質問と回答の関係になりうる部分は音声で提供したり、レシピをただ読み上げるのではなく次の手順を音声で教えてくれるような仕組みには、可能性があるのではないかと考えています。スマートスピーカを料理のアシスタントとして活用するようなイメージですね。

――ちなみに、Google HomeやLINEのClovaがある中で、なぜ最初の開発プラットフォームにAlexaを選んだのでしょうか。

 特に深い意味がありませんが、先行している海外で多くのユーザーを抱えているという状況や、クックパッドがAmazonのAWSを活用しているという点も背景にあると思います。将来的にはすべてのプラットフォームに展開できればという戦略で開発を進めています。

ベテランが基礎を作り、若手が飛躍する環境を作りたい

――料理きろくやAlexaスキルはどのようなエンジニアの方が開発したのでしょうか。

 料理きろくは新卒入社1年目のメンバーが、Alexaスキルは新卒入社2年目のメンバーが開発しました。2人は同期入社ですぐにそれぞれのプロダクトを担当したのですが、新卒入社1年目の12月には料理きろくが世の中に出て、2年目の11月にはAlexaスキルが出ているのです。そもそも2人のポテンシャルが非常に高かったのですが、そのポテンシャルがクックパッドに眠っている面白いプロダクトの構想と掛け合わさると、あっという間にサービスとして世の中に送り出すことができるわけです。

 社内にはチャレンジできる構想がたくさんあり、世の中からは“クックパッドは完成されたサービス”というイメージを持たれていますが、実際には私たちにとっての未踏の領域はまだまだ広大に広がっています。新たなインパクトのあるサービスを作ることができる可能性はたくさんあるわけです。しかも、実力があれば新卒1年目でも製品を世に送り出すチャンスがある。ポテンシャルの高いエンジニアを継続的に採用しながら、こうした新しいチャレンジを続けていければと考えています。

――若手エンジニアが入社1年目から製品づくりに携わっているというのは興味深いですね。一方で、ベテランエンジニアは研究開発部でどのような役割を担っているのでしょうか。

 ベテランのエンジニアは研究開発以外にも、立ち上がって間もない研究開発部の組織づくりに関わっていることが多いですね。たとえば、コードレビューのようなエンジニアリングの文化を部内に確立したり、広報やバックオフィスに関わったり。特に採用活動に割く時間が大きいですね。ベテランが組織の土台を作って、若手が新しいプロダクトづくりにチャレンジしていくという関係ができていると思います。


ベテランが組織の土台を作り、若手が新しいプロダクトづくりにチャレンジしていると原島氏

――サービスを運営する事業部とは、どのように連携しているのでしょうか。

 事業部からの要望を受けて技術シーズを提供するケースもあれば、私たちの側から開発して事業部に提案するケースもあります。たとえば、Alexaスキルは研究開発部からできてきたもので、開発を担当したエンジニアがAlexaに強い興味を持って独学で研究していて、社内での勉強会をCTOに提案したところ「仕事として開発してみては」という話になり開発に至っています。

 また、一般的に企業の研究開発部門は、事業とは直接の関係が薄い技術シーズも独自に研究開発していく傾向にありますが、私たちはクックパッドのサービスに近いところで「何のためにしているのか」を答えられることを重視した研究開発をすることにこだわっています。

 そのため、私たちは“サポーター制度”というものを作って、ある研究開発テーマに取り組む際には、そのテーマに賛同してサポートしてくれる他部署のメンバーを必ず見つけることをルールにしています。他部署のメンバーが“それ、いいね”と評価してくれるテーマに取り組むということです。サポーターは研究開発過程でも巻き込んで意見を取り入れるようにしています。それによって、単なるエンジニアの興味関心によるものではなく、クックパッドのサービスとして形になることをイメージした研究開発ができるのです。

――今後の研究開発部としてのロードマップを教えてください。

 研究開発部以降、優れたエンジニアを多数採用することができました。今後も、社内に眠っているさまざまなプロダクトの構想にどんどんチャンレンジしていきながら、引き続きメンバーを増やしていければと考えています。また、日本のオフィスで研究開発部が立ち上がった1年後に海外でも研究開発部門が設立されましたので、開発連携や知見の共有も進めていければと思います。

 これまで、研究開発部では2016年には画像認識、2017年には音声認識に力を入れてきました。2018年はこれらのテーマに加えて、IoTデバイスやスマートキッチンのようなハードウェアの研究開発に力を入れていきたいと考えています。

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