S’NEXTは3月23日、自分だけの音を見つけられるイヤホン「Make1・Make2・Make3」の発表会を開催。開発背景やクラウドファンディングの支援状況などを説明した。
Make1・Make2・Make3は、フィルタの組み合わせにより、847通り(Make1は77通り)以上の音を作ることができるイヤホン。Makuakeで現在クラウドファンディングを実施しており、3月23日現在で2700万円以上の支援金と800人以上のサポーターを集めている。
S’NEXTがクラウドファンディングを実施するのは今回が初めて。しかし2〜3年前から「Makeプロジェクト」構想はあり、そのきっかけになったのは、S’NEXTが約7年に渡り実施しているイヤホンの組み立て体験会だという。述べ5000人が参加したという組み立て体験会では、当初イヤホンの組み立てに注力していたが、現在では組み立てよりも音のチューニングを重視しているとのこと。自分の耳に合わせて好みの音質にチューニングをした参加者の中には、ほかのイヤホンは違和感があって聞けなくなる人が出てきているという。
この原因を「耳の形状は人それぞれで、音楽経験や感性も人それぞれ、同じ音を聴いていても、鼓膜に届いた時には人によって異なる音になる。そのため『自分だけの音』は人によって非常にピンポイントに定まるもの」とS’NEXT代表の細尾満氏は説明する。
この「同じ音でも人によって異なる音になる」ことがMakeプロジェクト発足のきっかけ。「自分だけの音というのが存在していて、オーディオメーカーはそれを提供できていない。音楽を聴く時に自分だけの音を聴く体験をしてほしかった」と細尾氏は話す。その事実を、クラウドファンディングを通じて、多くの人にしらせることができたという。
細尾氏は、個々にチューニングの精度を上げていくと、ある程度までは万人が良いと感じる音に仕上がるが、ある一定部分を超えると本人にしか良いと思えない音に仕上がることがあると話す。これをS’NEXTでは「個人性の谷」と呼んでおり、この部分に到達すると他人には受け入れられないが、本人にとっては夢のような音が出るイヤホンができ上がるとのこと。
一般的に販売しているイヤホンでは、この個人性の谷を越えることができない。しかし細尾氏は「ユーザーがもっとかんたんに個人性の谷を越えた商品を入手し易い環境をつくること」で、この課題を解決できるという。
そこでMakeプロジェクトでは、各種のフィルタを組み合わせることでチューニングができる仕様を採用。「Makeを使って、お客様をイヤホンの作り手に変えられないかと思っている」(細尾氏)とMakeプロジェクトの目的を話す。
S’NEXTの挑戦はこれだけにとどまらない。今後はユーザーが作り手になるために必要な道具や部品、素材の提供や、極小ロットでの生産受託など新たな展開を見据える。
細尾氏は「Makeプロジェクトは単なるキットではなく、こうした新たな展望を実現するための布石。ポータブルオーディオは『買わせるだけ』のビジネスでは、長続きしない。より深い体験を提供することで、オーディオファンを育てられる」と今後の方針を示した。
同日には、2017年に発売したエントリーモデル「E3000/E2000」の後継機となる「E5000/E4000」も披露した。
Eシリーズは「エントリー機で定番と呼ばれる製品を作りたい」という思いの下に開発。エントリー機はドンシャリ、わかりやすい音という常識がある中で、あえてドンシャリ感のない高音質を目指したという。
その背景には「エントリー機こそ、試聴ではなく、SNSの評価を見て購入する人が多いのではという仮説を立てた」(細尾氏)とのこと。店頭での試聴ではドンシャリ感のある音が選ばれる可能性が高いが、Eシリーズはじっくりと聴き込むことで音の良さを感じられるチューニング。SNSをきっかけに手に取ってくれる人が増えることを見据え、約10カ月で10万本以上を出荷するヒットモデルに成長。「地味でも手応えを感じた」(細尾氏)と話す。
新モデルE5000/E4000は、より精度を高めた仕上がり。E3000/E2000が80%の「いいね」を獲得できた機種だと捉えると、E5000/E4000は50%の「すごくいいね」がもらえる内容だと言う。想定価格はE5000が3万円程度、E4000が2万円以下程度になる見込み。4月の発売を予定している。
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