国際宇宙ステーションに送られたHPEのLinuxスパコンは順調--性能テスト実施

Steve Ranger (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2017年09月22日 13時46分

 宇宙でハイパフォーマンスコンピュータを稼働させられるかどうかを検証する1年がかりのプロジェクトが大きなハードルを越えたところだ。国際宇宙ステーション(ISS)でサーバに電源が投入された

 この実験は、商用オフザシェルフ(COTS)のパフォーマンスコンピュータを宇宙の過酷な環境で1年間稼働させることを目的として、Hewlett Packard Enterprise(HPE)とNASAが実施したものだ。この1年間という期間は、火星までの到達にかかる時間に相当する。

 宇宙研究プロジェクトに必要な計算の多くは、地球上で実行されている。これは、宇宙で利用できるコンピューティング能力が限られているためだが、これによって、宇宙船との間でデータの送受信が必要になるという別の問題が発生している。月面や地球の低軌道での宇宙探査では、地球とほぼリアルタイムで通信できるため、このアプローチでも問題はないが、火星探査では地球を離れるにつれて通信遅延が大きくなっていく。

 火星の近くでは、宇宙船から地球までデータが到達するのに20分かかり、その応答が宇宙飛行士に届くまでにさらに20分かかることになる。

 HPEが「Spaceborne Computer」と名付けたこのハードウェアには、高速なHPC用インターコネクトを搭載し、Linuxで動作する同社のサーバ「Apollo 40」が含まれる。このサーバには水冷式のエンクロージャが使用されている。HPEは宇宙空間でのスーパーコンピューティングにともなう環境的な制約と信頼性に対する要件を満たすために、特別なソフトウェアを開発した。

 HPEは、放射線、太陽フレア、素粒子、流星塵、不安定な電源などの宇宙空間特有の条件やリスクに対応するために、デバイスの堅牢性を高めるのではなく、システムソフトウェアを使って条件に応じてリアルタイムで調整を行い、環境に起因するエラーを緩和する手法を採用した。

 ISSの宇宙飛行士がこのサーバに電源を投入したことが確認できたのは、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから「SpaceX CRS-12」ロケットで打ち上げられたこのコンピュータを受け取ってから1カ月後となる米国時間9月14日のことだ。

 システムの動作速度を地球上にある同等のシステムと比較するテストを行うため、HPEとNASAのエンジニアリングチームは多くのベンチマークテストを実行した。

 HPEによれば、テストの結果、このデバイスはISS上で1テラフロップスの性能を発揮できる初めてのCOTSハイパフォーマンスコンピュータシステムであることが確認されたという。同社は、今回のハードウェアが宇宙空間での使用に耐えられることが確認されたら、ほかの新たな技術もISSに送られる予定だと述べている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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