World Wide Web Consortium(W3C)が、デジタル著作権管理(DRM)で保護されたコンテンツを再生するための仕様「Encrypted Media Extention」(EME)を標準として決定したことを受けて、電子フロンティア財団(EFF)がW3Cを脱退した。
EMEの標準化によって、オンラインで提供されているDRMで保護されたコンテンツを、ウェブブラウザでプラグインなしでデコードできるようになる。
W3Cは標準化を発表する声明で、EMEはよりよいユーザー体験を提供する一方、安全で、アクセシビリティも向上すると述べている。
W3CのディレクターTim Berners-Lee氏は、「ウェブには無料の部分も、有料の部分もある。コンテンツの制作に莫大な費用を投じた一部のコンテンツ制作者が、保護なしでコンテンツを提供できないことは理解できる。暗号化を解除する技術の中で、EMEには、従来の典型的なDRMとは異なり、ユーザーが攻撃から守られるという利点がある」と述べている。
一方EFFは、セキュリティ研究者を保護する条項がないことや、Berners-Lee氏がEMEの提案に対する反対意見を無視したことなどを理由として挙げ、W3Cから脱退した。
W3C会員のEFF代表者であるCory Doctorow氏は、「この問題に関する活動の過程でEFFが話した非常に多くのメンバー組織の代表者は、EMEはひどいアイデアだ(多くの場合もっと強い表現が使われた)という個人的な意見を密かに持っており、所属組織がこの問題で間違った立場を取っていることを嘆いていた」と述べている。「DRMが可能であると考える独立した技術者はほとんどいないし、ましてそれがよいアイデアだと思っている者はいない」
同氏はさらに、W3CがEMEを支持したことで、ブラウザには「法的に監査不可能な攻撃対象となりうる要素」ができ、企業はアーカイブの作成やアクセシビリティの向上などの正当な理由でDRMを迂回した者を訴えることができるようになったと主張している。
「W3Cの意思決定プロセスは、従来の秩序を乱すことで富を築いた企業に悪用されるようになっており、EMEのおかげで、それらの企業は今後、ほかの誰かのイノベーションの圧力を受けることはなくなった」とDoctorow氏は述べている。
EMEについては、提案当初から激しい議論が交わされている。2013年には、W3Cの最高経営責任者(CEO)Jeff Jaffe氏が、DRMが認められなかった場合、コンテンツ所有者はコンテンツをインターネットから引き上げる可能性があると発言したこともあった。
EMEはすでに、すべての主要なブラウザに組み込まれている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)