3Dコンピュータアニメーション制作ソフトである「Maya」をプラットフォームソフトとして使い、モデリングには「ZBrush」、エフェクトには「Houdini」を使用。それらソフト間をブリッジするパイプラインとしてポリゴン・ピクチュアズで自社開発したものを使うこともあるという。
吉平氏は「ポリゴン・ピクチュアズは日本のアニメ制作会社とは根本的に作り方が異なると思う。大規模で制作するためのポイントをピクサーなど米国のスタジオを手本にして、独特のワークフローを構築した」と制作工程を話す。
3DCGは、モデリングに時間がかかり、初期投資は高い。「初期段階での制作コストはかかるが、一度作ってしまえば次のカットで同じアニメーションを使える。アングルやライティングを変えて使うこともできるし、リユースしてコストを回収できる。一方で、作画アニメで時々見られる、いわゆるキャラクターの“作画崩れ”がないのは、CGアニメの大きな利点だと思う」と(吉平氏)は説明した。
ハイクオリティな映像が際立つBLAME!は、HDRかつドルビーアトモスという最新のスペックに対応したことでも話題だ。一方で、視聴するには対応機器やシステムが必要で、フルスペックで視聴できるユーザーは限定されてしまう。
「BLAME!は、作品的に映像も音響も新しいテクノロジを使って制作したいと思っていた作品。だが、ドルビーアトモスの対応が現時点で、どれだけの市場価値につながるのかという議論はあった。それでも音響監督の岩浪美和氏をはじめ、制作陣の思いが功を奏し、最終的にプロデューサーからOKが出て、日本アニメ初のドルビーアトモス採用作品になった。。しかも岩浪さんがドルビーアトモスをはじめ、5.1ch、7.1ch、7.1ch爆音ミックスと、各劇場に最適な音源を用意していただいたことで、劇場の個性に合わせた音響を体感できる作品になった」(吉平氏)。
Netflixのみで配信となるHDRに関しては、「今まで映像信号のレンジはテレビを基準にしていたが、それを拡張して作らなければいけなかった。レンダリングツールやコンポジット、さらには納品データの作り方までさまざまなところが今までとは違う。こうした技術的アプローチを考えながら取り組んだ」とコメント。
「せっかく作るのだから、通常版に比べてHDR版はその魅力が付加される映像を作る必要がある。そこでHDR版は暗闇と光の階調をフルレンジで持つことをテーマにした。照明によってドラマが描き出されるような演出を多用している」(吉平氏)と、HDR版の特徴を明かした。
BLAME!はスタジオをあげて取り組んだ、新たな挑戦にあふれた作品。こうしたアクションSFアニメーションは世界でも高く評価されているジャンルの1つだ。吉平氏は「日本のアニメには世界のアニメファンにもわかりやすい作品と、日本のアニメファンでないとわかりにくいテーマがあるように思う。ポリゴン・ピクチュアズとしては、日本だけでなく、世界の視聴者に向けて、独自のアニメーションをこれからも発表していきたい」とした。
現在、ポリゴン・ピクチュアズと吉平氏はアニメーション映画「GODZILLA 怪獣惑星」を制作中だ。
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