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求められる“プロ意識と危機感”--eスポーツ関係者が語った日本の現状と課題 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2017年06月21日 08時30分
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選手の意識改革とコミュニティの大切さ

チョコブランカ氏
チョコブランカ氏

 チョコブランカ氏は自身のプロチームでの活動を振り返り、常に契約更新の有無に対する不安がつきまとい、それゆえに危機感を強く持っていたという。日本でも前例がなく、海外でも対戦格闘ゲームの女性プロゲーマーがそれほどいないという環境下で、どのようにしたら評価されるかを考えを重ねていった語る。そんなチョコブランカ氏から見て、今のプレーヤーは危機感の足りなさと同時に「すぐに答えや結果をほしがる」と指摘。そのため育成企画でもすぐに答えを与えるのではなく、危機感を持って自発的に考えるような指導をしているという。

 大友氏は大会の運営や、そこに参加するプレーヤーなどに接してみて、タイトルやジャンルによってモチベーションや立ち振る舞い、メンタルが異なると語る。例えば格闘ゲームのトッププレイヤーは経験が長いこともあり、マナーや礼儀をわきまえつつ、選手紹介ムービーなどでパフォーマンスを披露し盛り上げるなど、立ち振る舞いをわかっている人が多いという。

 その一方で、まだ新しいゲームタイトルなどでは、選手も大会経験が少なかったり若年層が多いといったことから、SNSなどの発言に困惑することもあったという。もっとも大会を重ねることにより、「ユニフォームを着用し、ヘアメイクで整えられ、ステージに立つと、素人の方でも見られる側としてのスイッチが入る瞬間がある」と、選手にも変化があると説明。大会を運営する立場として育成には深く入り込めないものの、見られる場としての提供を通じて自覚をうながしていきたいと語った。

 これまでも選手の自覚を促す発言をしてきた江尻氏は、今の選手を取り巻く環境が恵まれていることを感じてほしいという。女子サッカーを例に挙げ、2011年にFIFA女子ワールドカップで優勝を果たして世界一になり、連日さまざまなメディアが取り上げ話題となっていたが、国内リーグに戻ると、選手自らビラを配って集客に奔走するという状況があったという。海外でeスポーツは競技人口が多いと言われていても、日本における現実は違うものという認識を持ち、プロ意識を高めてゲームに対して真剣に向き合ってほしいと語る。

大友真吾氏
大友真吾氏

 日本ならではの大会運営ということについて、大友氏は今の日本においてただ試合を実施するというたけではなく、お祭り的なエンタメ要素も盛り込み、配信番組を視聴するだけでは味わえない体験を提供することによって、すそ野が広がっていくのではという。

 すそ野を広げるという観点から、忍ismが開催している対戦格闘ゲーム「ストリートファイターV」のオフラインイベント「Tokyo Offline Party」についても話題に挙がった。定期的に行っているこのイベントは、全国各地から遠征しているプレーヤーもいるなど盛況という。チョコブランカ氏は、初心者から上級者まで楽しめるようにと、タイトル名に大会ではなく「パーティ」と付けているという。

 ほかにもゲーム配信やイベントスペースに活用できるレンタルスタジオ「スタジオスカイ」を持ち、イベントを運営するプレーヤーへのサポートも行っている。この「スカイ」という名前は、閉店した老舗のゲームセンターの名前からとったものとし「その場所が好きで、集まるみんなが好きだった。そういう居場所が作りたかった」と語る。そして「コミュニティがとても大事。コミュニティが元気になれば、その上も元気になっていく。私たちは“流れに乗る側”ではあるが、そのなかでできること、私たちにしかできないことをやっていきたい」とコメントした。

 江尻氏は、ゲームをプレイするプレーヤーだけではなく、ゲーム観戦をする人も育てなければならないとし、ゲームを見ることが楽しいと感じられるようなイベントの開催や、スポンサーの地方イベントに選手を派遣して直接交流できるような場を作るなど、コミュニティの輪を広げる活動も行っていると語る。このようにして自分たちを応援してくれる根となるものを作らないと、次のステップにつながりづらいと考えているという。

 ゲームメーカーがeスポーツに対してどのような姿勢や見方をしているのか、ということも問いかけた。大友氏は、ここ最近スマートフォン向けのゲームで対戦型のタイトルが増えていることもあってか、リリース前の段階から問い合わせを受けることが増えているという。そういった背景もあって「すごく協力的な印象を持っている」とコメント。

 筧氏は「メーカーによってスタンスの違いはある」という前置きをしつつ、eスポーツに対して向き合う姿勢が見られるようになったと語る。自社タイトルを活用する場合のレギュレーションを策定するようになったメーカーがあったほか、これまで大会開催に関して門前払いしたものの、「断らずに協力すればよかった」というところもあったという。とかくこの1年で、メーカーのeスポーツに対する見方や姿勢はガラッと変わったととらえているとした。

「現役を退いてからのほうが、人生は長い」プロゲーマーのセカンドキャリア

 最後の話題は、プロゲーマーのセカンドキャリアについて。大友氏は、CyberZがゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」を運営していることもあり、一線を退いたプレーヤーが配信者として活動する道もあるのではと語る。以前は面白くてトークもできるような人が人気を集めていたが、今はゲームプレイそのもので人気を得ている人も増えているという。またゲームの実況者が不足しているとし、スポーツ中継のアナウンサーのようにゲームの知識と盛り上げの両方がプロフェッショナルとしてできる人が少ないことから、ゲーム実況者のプロを育てることに貢献していきたいとした。

 チョコブランカ氏は、そもそも忍ismを起業したことが、自身のセカンドキャリアのためだったと説明。続けてこれまで対戦格闘ゲームにおいてコーチという存在が珍しいことから、育成選手の募集だけではなくコーチの募集も行ったという。こうして新しい分野に挑戦しているなかで、それが誰かのセカンドキャリアに繋がればと展望を語った。

 筧氏は、日本eスポーツ協会としてサッカーなどのプロスポーツで見られるような、全国各地の地域に根差した存在となれるような活動を行っているという。こうすることによって産業化が進めば、引退した選手が指導者やスタッフといった形で雇用も創出できる。こうして産業がまわっていくような取り組みを進めていきたいとした。

 江尻氏は、すでにチームからパートナー企業に就職している事例があることを説明。このトークセッション中も選手に対しての厳しい意見が続いていたが、自身には「現役を退いてからのほうが、人生は長い」という考えがあるという。セカンドキャリアについても、そもそも現役時代に自らの価値を高めなければ、望む形のセカンドキャリアは勝ち取れないと指摘。江尻氏はチームに招き入れた以上は何とかしたいと思っても、選手自身がコミットしなければ話は成立しないとした。そして「真剣に向き合って覚悟を持って臨んでほしいし、そういう人には、全力でサポートしたい」と語った。

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