中学生の「ランサムウェア逮捕劇」に見る危険性 - (page 2)

ランサムウェアはかっこいい?

 一般の高校生にランサムウェアについて聞いてみると、「(よくわからないけど)名前がかっこいい」という答えが返ってきた。「“マルウェア”もかっこいいけど、ランサムウェアのがもっとクール」。

 実は、ランサムウェアを作成した中学生に対する称賛の声も少なくない。

 「動機が知名度を上げたかったというのがかっこいい。もはやグラフィティに近い」

 「日本にもすごい中学生がいるもんだね。逮捕じゃなくて表彰されるべき」

 「ランサムウェア作れるのすごい。逮捕されるのもったいない。役立ててほしい」

 などの声が並んでいる。おそらく同年代の彼らの知識や技術力などを賞賛したものだと思われるが、結果としての行動が間違っているのは事実であり賞賛すべきではないことは明らかだ。

 2017年に世界中で猛威を奮ったランサムウェア「WannaCry」を止めたのは、22歳のマーカス・ハッチンズ氏だった。ランサムウェアのキルスイッチ(停止スイッチ)を発見し、全米への感染を防いだのだ。ほぼ同年代でも、能力を建設的な方向で生かしている若者もいることはもっと知られていいだろう。

重大な犯罪であることを伝えることが必要

 未成年によるサイバー犯罪が続く理由は、ネット上で容易に知識や作成ツールなどが手に入れられるということが背景にある。同時に、自分の行為がサイバー犯罪であるという認識、他人に迷惑をかける重大な犯罪行為であるという自覚に乏しいことが原因となっていることは間違いない。

 未成年のサイバー犯罪が書類送検・逮捕に至るケースには、本人がTwitterなどで作成・所持を自慢して足がつくケースが少なくない。つまり、あくまで自己顕示欲や承認欲求のためにこのような行動に走っている可能性が高いのだ。同時に、罪の意識に乏しいことも指摘できるだろう。

 今回逮捕された生徒は、「小学校5年生の頃、PC教室に通って以来のめりこんだ」と答えている。2020年より小学校でもプログラミング教育必修化となるが、子どもに知識だけ入れても悪用するようでは意味はない。不正アクセスは重大な犯罪であるなどの正しいITモラル、情報リテラシーを同時に教えていく必要がある。そして、正しい知識や技術の使い方を教えていくべきだろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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