そして2016年4月に、同社の霞か関本社が入居する三井不動産とともに、IoTトイレの実証実験を開始。利用者のフィードバックを受けながら、トイレに設置した機器の連続運用や、センサの感度調整、データ送受信に関するプログラムの改修などを行った。
さらに同年9月からは、CTCの霞が関と大崎のオフィス、11フロア・44個室での導入を開始。従業員からも「トイレで待たなくて済むようになった」と好評だったことから、三井不動産のオフィスビルやその他の業務施設などにも展開を始めた。問い合わせ件数は、リリース当初は1日20件ほどで、現在は週に数件ほどあるという。
有馬氏は、企業に対してIoTトイレを提案する中で、「総務予算がそこまでない企業が多い」「お腹の弱い社員の悩みを解決して、売上にどう効果があるのか見えにくい」といった課題が浮き彫りになったと話す。また、同社の発表後にKDDIやソフトバンクなどの大手キャリアが、競争力のある価格で続々とIoTトイレ事業に参入していることから、CTCならではの差別化が求められていると話す。
そこで、今後は利用者のデータを蓄積しながら、トイレの“稼働率”を下げるための方法を見出したいとしている。同社のIoTトイレでは、前日の稼働状況を管理画面で見ることができ、個室トイレに何人が何分入っているのかを1分刻みで把握できるため、稼働率が高い時間帯や、混みやすい場所にある個室などを分析できるという。
有馬氏によれば、個室トイレの使用時間は“5分間”の人が最も多いが、中には数時間入っている人もいるという。「満員のトイレの多くがスマートフォンをいじっていたり、寝たりしている」(有馬氏)。IoTトイレでは、1時間以上空かない個室があると、前述したビジネスチャットツールのTocaroに自動通知が届くように設定することもできる。これにより、企業の総務担当が安全確認にいったり、警備員が見回りの際に活用したりできると話す。
企業以外での活用も見込んでおり、現在は駅などの交通機関やデパートなどの小売店などにも提案しているという。たとえばデパートでは、比較的空いている上の階のトイレを狙って使う人も多いため、トイレの稼働状況を知ることで、下の階に降りてきた顧客に買い物をしてもらう施策を考えられるかもしれない。また自治体と連携して、観光マップのウェブサイト内で、市街のトイレの空き状況を確認できるようにするにするといった取り組みも進められればと語った。
さらに、今後はIoTトイレのシステムを活用して、企業の会議室の空き状況を把握できるサービスも展開する予定。予約されていたものの使われなかった会議室を自動で解放することで、次の使いたい人がすぐに予約できるようにするという。
これまで、“顧客の課題”を解決することをミッションとしてきたCTCだが、現在挑んでいる新規事業は、“世の中の課題”を自ら見つけ出し、商品化することだ。望月氏は、「従来と求められるスキルが全く異なるため苦労することもあるが、そこでブレイクしなければ企業の成長はない」と語る。今後は、現在従業員の75%を占めるシステムエンジニアのうち何割かを、社内ベンチャーのメンバーとして育てていきたいという。
「CTCグループの理念である“Challenging Tomorrow’s Changes”は、自ら変化を誘発することで一歩先へ踏み出すという姿勢を表している。世の中の変化をすばやく読みとり、CTC自らが世の中の変化を誘発していきたい」(望月氏)。
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