産業用ハイパースペクトルカメラ「HawkSpex」を開発する研究機構が、スマートフォンの既存のカメラとディスプレイを使って物体をスキャンし、その成分を確認できるアプリを開発した。
オーガニックとして販売されている果物に殺虫剤が使われていないかテストする、あるいは化粧品をスキャンしてホンモノかどうかを確認する、といった用途にコンシューマーがHawkSpexアプリを利用してくれることを、ドイツの研究機構Fraunhofer Institute for Factory Operation IFF(以後、Fraunhofer IFF)は期待している。
Fraunhofer IFFは既存の産業用スキャナを製造プロセス向けに提供しているが、物体の表面から反射する光をとらえて分析するには、特殊なスペクトルカメラが必要だ。
スペクトル範囲と物質の間には関連性があることが分かっているため、センサとソフトウェア分析を組み合わせれば、各物質の指紋スペクトルを作成することができる。
2017年終盤にリリース予定のこのコンシューマーアプリは、スマートフォンのカメラを使って同様の分析を行う。Fraunhofer IFFのエキスパートグループマネージャーであるUdo Seiffert氏によると、この機能は、同機構がスペクトルカメラを使って指紋スペクトルを取得するプロセスを逆転させることで可能になったという。
「(スマートフォンの)カメラは、広帯域の3チャネルセンサを提供してくれる。つまり、このセンサはあらゆる波長をスキャンし、さまざまな色の光で物体を照らす」(Seiffert氏)
スマートフォンのディスプレイは光源として働き、物体をさまざまな色で素早く照らす。一方、カメラは反射された色について、さまざまな詳細情報を取得する。スマートフォンのハードウェア向けに最適化されたアルゴリズムが、その物体の化学組成を分析する。
Fraunhofer IFFは、同アプリの最初のバージョンを完成済みだが、さまざまな物体のスキャンをサポートする機能を開発するまで、プライベートベータを提供しないという。
このアプリが計画通りに機能するのなら、Fraunhofer IFFは先頃発表された「H2」スマートフォンの同様の機能よりも簡単にHawkSpex mobileアプリをコンシューマーに普及させることができるかもしれない。H2スマートフォンはConsumer Physicsの専用の物質センサを使用する。
Consumer Physicsは数年前から「SCiO」と呼ばれる小型分子スキャナを販売しているが、それをスマートフォンに搭載可能なセンサフォーマットに小型化した。SCiOは、さまざまな物体の分析用にカスタマイズされたサードパーティー製アプリを使用する。
これとは対照的に、Fraunhofer IFFは同アプリに対して「Wikipediaアプローチ」を採用し、コンシューマーがさまざまな物体のサポートを追加できるようにする意向だという。コンシューマーが各スキャンによるデータをFraunhofer IFFに送ると、同機構のエンジニアが測定結果を検証し、アプリをアップデートする。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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