「VISAもアリババも競合ではなくパートナー」--PayPalの国内戦略

阿久津良和 羽野三千世 (編集部)2016年12月07日 07時00分
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PayPal カントリーマネージャー 曽根崇氏

 PayPalは12月6日、新カントリーマネージャーに就任した曽根崇氏によるビジネス戦略説明会を開催した。曽根氏は10月3日に内部昇格し、現在の席に就任している。

 PayPalは1999年に創業し、2010年に日本オフィスを設立した。PayPalの決済サービスは、現在、200カ国以上の地域で100種類の通貨決済に対応し、25種類(国内では22種類)の通貨の口座が対応する。「クレジットカードの番号や有効期限を気にせず、PayPalアカウントで決済できる。不正取引が発生した際は売り手と買い手を共に保護する」(曽根氏)

 そのビジネス成長は著しく、2015年度のPayPal上の取引高は約2820億ドル。2015年度第3四半期と2016年度第3四半期を比較すると、PayPal上での取引高は約697億ドルから870億ドルへと25%増、年1回以上利用するアクティブアカウント数は約1億7300万人から約1億9200万人へ11%増、決済件数は約1220億件から約1500億件へ24%増加した。

 曽根氏は、同社が今後注力する分野として「中小企業スタートアップ」「訪日観光」「モバイル」の3つを挙げた。

 同社は、“起業するならペイパル”をキーワードに、スタートアップおよび開発者向けの啓蒙活動として、勉強会や交流会を年4回実施している。これより、スタートアップ企業がPayPalを導入するケースが増えてきたと曽根氏は語る。

 現在PayPalを導入している国内企業には、家事代行サービスのANYTIMES、モバイルキャッシュのCASHb、裁縫系サービスのnutte、グループイベント管理やチケット販売のPeatixなどがある。中小企業との協業にも積極的だ。8月には配送物流サービスのopenlogi、10月には大手企業向けECパッケージを提供するecbeingとの協業を発表している。この成果について曽根氏は、「さまざまな角度からECビジネスとソリューションの拡大を目指している。その結果、PayPalの利用者数も2桁パーセントで成長中だ」と述べた。

 訪日観光については、宿泊施設でのPayPal利用を可能にするため、8月に予約番、ダイレクトイン、9月にOPTIMA、12月に宿シスと提携した。現在ブッキングエンジンを開発中のサービスを含めると、合計8社の宿泊予約システムと提携している。「自社サイトで予約を受け付ける宿泊施設のうち、8割にリーチできるまでに至った」(曽根氏)

 また、日本旅館協会とも提携しており、同協会に加盟する約2800施設のうち100施設以上の新規申し込みがあったことを明かした。自社予約システムを運用する宿泊施設に対しては、PayPalが導入サポートと開発支援を行っている。

 モバイル分野については、“モバイルがすべて中心になる”というキーワードを掲げて、モバイルアプリのUIを改善するとともに、新しいモバイルサービスを展開していく。一例として、曽根氏、1回のログインで異なるECサイトでもPayPalを利用可能にするモバイルアプリ「OneTouch」を紹介。OneTouchでは、180日間ID/パスワードを保持し、途中で再ログインすれば保持期間を自動延長する。


モバイル分野に注力するため、モバイルアプリのデバイス最適化を行う

 PayPalは、グローバルでVISAやMasterCard、AliBabaグループなどと協業している。「かつては、VISAや(独自決済を持つ)大手ECサイトを競合と見なしていたが、現在は提携に至っている」と曽根氏は説明。また、「日本の電子決済市場はまだ温まっていない。そのような環境では企業が競争するよりも、プレーヤー同士で共に付加価値を高め、利用者に利便性を知ってもらう活動が大事。さらに顧客には選択肢の拡大にもつながる」(曽根氏)と述べた。

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