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“供託金逃れ”は言い過ぎ?--LINEの「宝箱の鍵」問題、弁護士の見解は

山川晶之 (編集部)2016年04月07日 16時17分
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 LINEのスマートフォンゲーム「LINE POP」内のアイテム「宝箱の鍵」が、資金決済法における前払式支払手段に該当するのではないかと4月6日に一部で報じられた。LINE側も同日に報道を否定する内容のプレスリリースを掲載。現在も報道が加熱している状況だ。

 前払式支払手段とは何か、ゲーム内のアイテムは“通貨”として扱われるのか、資金決済法に詳しい弁護士ドットコムの田上嘉一弁護士に、問題の背景と争点を聞いた。田上氏は、大手ソーシャルゲーム会社の法務部を歴任し、ゲーム内のアイテムと資金決済法の関わりにも精通する人物だ。

 ただし、田上氏はLINEとは何の関係もない第三者であり、今回の件についても法的見解を示す立場ではない。報道やインターネット上の情報をベースに、あくまでも当該論点に関して一定の知見を有する、一弁護士からのコメントであることをご留意いただきたい。

前払式支払手段とは?

 まず、資金決済法における前払式支払手段の概要と、同法におけるソーシャルゲーム内のアイテムの扱いについて、田上氏に見解を聞いた。

資金決済法では、以下の要件を満たすものを「前払式支払手段」として規制しています。

1.金額等の財産的価値が記載・記録されていること(価値の保存)

2.金額・数量に応ずる対価を得て発行される証票など、番号、記号などであること(対価発行)

3.モノやサービスの提供を受けるときなどに代価の弁済などで使用されること(権利行使)

典型的なものはテレホンカード、商品券やプリペイドカードですが、法改正前のプリカ法(前払式証票規制法)では、物質的な実体を伴うものに限られていたところ、2010年に施行された資金決済法では、電子マネーのように物質的実体をもたないデータであっても、前払式支払手段に該当するようになっています。

前払式支払手段には、発行者(と子会社など)に対してのみ使用できる自家型前払式支払手段と、第三者に対しても用いることができる第三者型前払式支払手段の2種類があります。前者は届出で足りますが、後者は影響力の大きさから登録制となっています(ただし、どちらも残高が1000万円以上となった場合)。

一般的に、ゲーム内の「通貨(※あくまでも便宜上であり実際の通貨には該当しない)」とよばれるものは、電子的に財産的価値が記録されており、金額数量に応じる対価の支払いに対して発行されます。さらにゲーム内でのアイテムとの交換やゲームを進行させる権利を行使する手段として使用されているので、前払式支払手段に該当します。

ゲーム内で販売されるアイテムが、前払式支払手段に該当するかどうかについては、各アイテムが上記の要件を満たすかどうかによって決まりますので、該当するアイテムと該当しないアイテムとが存在します。

LINE POPの「宝箱の鍵」は該当する?

 次に、LINE POP内のアイテム「宝箱の鍵」が、資金決済法の前払支払手段に該当するかについて見解を聞いた。

報道によれば、現在ではLINE POPの仕様は変更されているようです。したがって、あくまでLINE POPの仕様についても、報道で伝えられているものを前提とします。

インターネット上の情報によれば、LINE POPでは、「ルビー」というアイテムを購入できるようです。このルビーは、さらにゲーム内においてさまざまなアイテムと交換できるようです。

そうしますと、このルビーは、財産的価値を電子的に記録しており、ユーザーからの支払いを対価として、金額に応じて、電子データとして発行され、ゲーム内でのさまざまなアイテムと交換することによって使用する以上、上記の各要件を満たし、前払式支払手段に該当するものと考えます。

実際に、LINEは「前払式支払手段(第三者型)発行者」として、関東財務局に登録しています(関東財務局第00607号)。

今回問題となっているのは、ルビーとの交換によって入手することができる「宝箱の鍵」というゲーム内でのアイテムが、前払式支払手段に該当するかという点です。これは、資金決済法が保護すべき、財産的価値があるものはどこまでかという議論になります。

一般に、ゲーム内のコインでガチャによって得たカードやアイテムはすでに保護の対象外です。これらは、対価に応じて発行されてはいますが、財産的価値を有するものではありません。ゲーム内のアイテムとして使用することはあっても、モノやサービスの対価として権利行使されるわけではなく、すでにゲーム内のアイテムにすぎないと考えられているのです。

つまり、何か他のアイテムやキャラクターなどと交換するという交換的価値、媒体価値を持っている場合には前払式支払手段とし、そうではなくて、そのもの自体がゲーム内で使用するキャラクターであったり武器であったりすれば、前払式支払手段ではないということになります。

宝箱の鍵についても同様に考えられ、ルビーという財産的価値を持つ前払式支払手段との交換によって発行されてはいますが、これが宝箱を開けるというアイテムなのか、それとも宝箱の中のアイテムを獲得するための権利行使手段なのかという解釈の違いなのです。

この場合、例えば、キャラクターの攻撃力を+10アップさせる武器があった場合、この攻撃力増加というものが武器そのものの効果なのであって、武器というアイテムと引換えに攻撃力が上がるわけではないといえるでしょう。

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