政府観光局によれば、2015年の訪日外国人旅行者数は前年比47%増の約1973万人となった。東京オリンピックが開催される2020年に向けて、この数は年々増えることが予想される。それに伴い国内ホテルの稼働率も上がっており、ホテル側も訪日外国人向けのサービスや機能を充実させるといった、“おもてなし”をする必要がある。
こうした状況を受け、KDDIは2月16~19日に東京ビッグサイトで開催されている「HCJ2015 国際ホテル・レストラン・フードショー」で、ホテル向けの最新ソリューションを展示している。その中でも目玉となるのが、複数人で同時タッチできるガラス製のインタラクティブディスプレイだ。今後、ホテルや商業施設などと商談を進め、早ければ2016年内にも消費者が利用できるようにするという。
このディスプレイには、iPhoneなどに搭載されている薄くて傷のつきにくい、米Corningの「ゴリラガラス(Gorilla Glass)」を採用しており、ホテルのフロントや客室など、幅広いシーンでの利用を想定しているという。展示ブースでは、55インチを3台縦置きした大画面と、テーブル型の2種類を用意。収録された多彩なコンテンツのほか、ペンによる書き込みや、2次元バーコードアプリの操作などを体験できた。
ディスプレイ自体は米国から調達するが、その上で動作するコンテンツや、通信回線はKDDIが提供する。アプリは自由に開発できるため、ホテルや施設によってオリジナルのコンテンツを用意できると、KDDI ソリューション事業本部 ソリューション推進本部長 理事の有泉健氏は説明する。
このほか、ブースではホテル客室内の照明や空調、カーテンの開け閉めなどを制御できるタッチパネルを展示。どのコンテンツをタッチしたのかなどのデータを蓄積することで、その顧客が次回訪問した際に、最適な照明や空調で迎えられるとしている。さらに、鏡の上に情報を表示できるミラー型のディスプレイなども展示されていた。
同社では2月12日に、日本全国のプリンスホテルにWi-Fi環境を提供することも発表している。2015年12月には、ホテル業界の利用者向けとしては国内初となる次世代光ファイバー通信技術(1本の光ファイバー回線を複数の利用者で共有する伝送技術)「G-PON(Gigabit Passive Optical Network)」を活用したWi-Fi環境の提供を、軽井沢プリンスホテルのイーストコテージエリアで開始していた。
これまでホテルなどではメタルLANを採用していたが、光ファイバーを用いたG-PONによって、メタルLANの2~10倍となる最大伝送速度10Gbpsの高速通信を利用できるようになるという。また、データ量が広がってもケーブルの張替えが不要なほか、メタルLANと比べて約600倍の距離に対応できるため、広い敷地や大規模施設などもカバーできるとしている。
セキュリティ対策として、KDDIのデータセンター「TELEHOUSE」に設置された認証機器で一元的に管理するほか、無線システムの暗号化、客室間および利用端末間のアクセス制限を実施し、安全性を図るという。また、Wi-Fi環境を提供するための設備では、金融機関などでも利用されている「KDDI Wide Area Virtual Switch」を採用。強固なファイアウォールで守られた高速インターネット接続環境を実現するとしている。
さらに、TELEHOUSEに設置された認証機器を活用し、利用者の宿泊期間中は、1度の認証で継続してWi-Fiを利用できるよう、滞在中のホテル館内に加えて、他のプリンスホテルや関連施設との「Wi-Fiローミング」を実施。一部のプリンスホテルでは、チェックインと同時にテレビ画面上にパスワードが表示される仕組みも導入され、パスワード表示チケットの紛失対策と利便性向上を実現しているそうだ。
さらに、Wi-Fi利用時の操作や不具合発生時の問い合わせなどでは、訪日外国人利用者向けに、一部ホテルを除き日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語に対応(品川プリンスホテル、グランドプリンスホテル広島は、日本語、英語に対応)した「多言語ヘルプデスク」を常設するとしている。
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