全国の空いている月極や個人の駐車場を貸し借りできるサービス「akippa(アキッパ)」を運営するakippaは1月29日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、トリドール、朝日放送、ディー・エヌ・エー(DeNA)の4社から、総額6億円の資金を調達したことを発表した。累計調達額は約9.5億円で、今後は人材採用や駐車場獲得を推し進める。
akippaは、スマートフォンアプリを使って全国の空いている駐車場を探して事前に予約できるサービス。これにより、現地で駐車場を探し回らなくて済む。また、支払いも事前登録したクレジットカードで完結できる。
「レシピを調べる時にはみんなクックパッドを使う。それは消費者のマインドが取れているから。駐車場と聞いてakippaを思い浮かべる人はまだ少ない。大手のタイムズなどを超える駐車場を獲得し、『探す時はまずakippa』というマインドシェアにしていきたい」――akippa代表取締役社長の金谷元気氏は、このように展望を語る。
2009年に創業した同社は、当初の5年間は携帯電話と広告の販売会社だったが、「インターネットの力でリアルな領域を変えていきたい」という金谷氏の思いもあり、事業内容を大幅に変えることを決意。世の中の課題について社内でアイデアを募ったところ、「営業時に駐車場が見つからない」という意見が多かったため、2014年4月に駐車場シェアリングサービスのakippaを立ち上げたのだという。
その当時、日本ではまだタクシー配車「Uber」や空き部屋シェア「Airbnb」などのサービスの知名度は低く、金谷氏自身も事業を開始してからシェアリングエコノミーという言葉を知ったそうだ。ただ、もともとシェアすることが一般的な駐車場は、ライドシェアや民泊よりも利用の心理的なハードルが低いことから、利用者や駐車場数は順調に拡大しているという。
akippaの最大の売りは、一般的なコインパーキングよりも料金が圧倒的に安いこと。たとえば、渋谷のタイムズで平日10~22時まで12時間借りると4500円かかるが、akippaでは同様のエリアで1800円で済む。貸し主は駐車場に専用のコーンを置くだけなので、ゲートなどの機器が必要なく、初期投資0円で空きスペースを駐車場として活用できるためだ。同社は、ドライバーが支払った料金の4割を貸し主から徴収している。
貸し主の年齢は40〜50代が中心。土地を持っている地主の空きスペースや、自身がクルマを運転しなくなったり、子どもが結婚してクルマごと引っ越してしまった個人宅の駐車場などが貸し出されている。中には、借りる際に挨拶にきてくれるユーザーもおり、そうしたコミュニケーションを楽しみにしている貸し主もいるという。月額収入は、たとえばスタジアム周辺などでは、地主で30万円、個人宅で5万円程度だという。
一方、借り主の年齢は30〜40代で、週末はファミリー層が多いという。都内の公園やショッピングモールなどは駐車場が混雑するため、多少料金がかかっても近場ですぐに駐めたいというニーズに応えている。また、嵐やEXILEなど人気アーティストのコンサートの際にも、会場の周辺で予約が殺到するそうだ。需要が増した際には、それに連動して駐車場料金も上がるがそれでもすぐに埋まってしまうという。
駐車場の数は4400で、半年前の2000から倍増しているそうだ。駐車場数1位のタイムズが約1万5000、2位の三井のリパークが約1万となっているが、「いまのペースなら、2017年内にはトップになれる」と金谷氏は自信を見せる。同社が契約する駐車場エリアの比率は、東京が4割、大阪が4割、そして残りの2割が札幌、仙台、福岡、名古屋などだという。
実は、akippaは法人にも利用されている。たとえば、都内などの駐車場のないコンビニエンスストアでは、配送トラックを路上駐車するしかなく、それによって近隣住民からクレームがくるといった問題があった。そこでakippaと契約し、近所に専用の駐車場を用意することで、この問題を解決したという。こうした事例も増え、売上全体に占める法人の割合は25%と少なくないが、金谷氏はあくまでも個人での利用を中心に増やしていきたいとしている。
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