iOS版のリリースなどにより、多様なデバイスで統一されたウェブ体験を拡大させるブラウザ「Firefox」。その開発者向けカンファレンスが開催された。テーマは「INSPECT, HACK, IGNITE(調べて、いじって、灯をつけろ)」という、オープンな環境を提供し続けてきたMozillaらしいものだ。
11月15日、東京港区のTEPIA ホールでFirefoxの開発者向けカンファレンスである「Firefox Developers Conference 2015 in Tokyo」がMozilla Japanの主催で開催された。
同カンファレンスでは、Mozilla Corporationのプロダクトマネージャで「Firefox OS」などを担当するJoe Cheng氏らMozilla Corporation のエンジニアも多数登壇した。
これまでFirefoxの利用場面の中心であったデスクトップから、Firefox OSを搭載したスマートテレビの登場やiOS版Firefoxのリリースまで、日常のより多くの場面でオープンで安全なネット体験が可能になったことをアピールした。そのひとつの例として、Firefoxに搭載されたトラッキング保護機能やプライベートブラウジング機能がクローズアップされた。
同カンファレンスの基調講演は、Mozilla Japan 代表理事の瀧田佐登子氏から始まるリレー形式で行われた。そこで改めて強調されたのは、ウェブというネットの利用が、企業の戦略だけに左右されることのない、オープンで安全な環境を作り上げることの重要性であった。
シークレットゲストとして登場した、Mozilla CorporationのテクニカルエバンジェリストであるDietrich Ayala氏は、FirefoxやFirefox OSのエコシステムの発展が、コミュニティーによりオープンで事前に計画されていない中で行われていると述べた。その具体的な例として、ディープラーニングによる音声認識や医療分野でのFirefox OS利用を紹介した。
同イベントでは、このほかにも開発者やウェブデザイナー向けのテクニックからJavascriptの高速化やWoTまで、幅広いテクニカルセッションが行われた。
Mozilla Japan エンジニアリングマネージャであるBrian Birtles氏は、「鉄腕アニメーション!」と題したセッションで、鉄腕アトムのように黎明期の日本テレビアニメで用いられた生産性の高いアニメーション制作テクニックを紹介するとともにCSS TransitionsやCSS Animationsなどの機能やFirefoxに搭載の開発ツールを紹介した。
また、Javascriptの標準仕様であるECMAScriptの最新動向、既存のC/C++コードをウェブブラウザ上で高速に実行するEmscriptenやasm.jsといった技術を解説した。
展示スペースでは、Firefoxによる応用例やFirefox OSによるデバイスなども展示されており、ブラウザベースの仮想現実(VR)環境である「WebVR」、Firefox OS搭載の小型開発ボード「CHIRIMEN」などを実際に体験することができた。
ウェブブラウザであるFirefoxは、最初のバージョンのリリースから、2015年で11年を迎えた。その間に、ウェブは、日常生活や企業活動に欠かせない存在へと成長した。一方で、ウェブに関わるツールやアクセスデータなどが、企業のコントロール化におかれる場合が増えてきている。イノベーションを進める上で企業の役割は大きいが、ユーザーの自由や安全を一方的に侵害するのではなく、ユーザーの自主性とバランスを取ることが重要だと言える。
そんな中で、登場から一貫して、ウェブのオープン性と自由を標榜しているMozillaの活動は、今後も重要であり続けるはずだ。そして、多くのエンジニアにとっても、このようなカンファレンスは、自由に情報交換やディスカッションができる心強い場所と言える。
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