資産運用サービス「WealthNavi」を運営するウェルスナビは10月26日、グリーベンチャーズ、インフィニティ・ベンチャーズ、SMBCキャピタル、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルおよびDBJキャピタルとの間で、約6億円の資金調達に合意したことを発表した。今回の増資にともない、グリーベンチャーズの天野雄介氏が社外取締役に就任した。
WealthNaviは、これまで機関投資家や富裕層しか利用できなかった、国際分散投資による資産運用とリスク管理を、低価格で誰でも利用できるサービス。現在は、ユーザーのリスク許容度を診断し、それぞれの許容度にあわせて最適なポートフォリオを提案している。2016年初旬にはニューヨーク証券取引所とシステム連携し、スマートフォンやタブレットで簡単に取引できるようにする予定だ。
ウェルスナビ代表取締役の柴山和久氏は、日英の財務省で9年間、予算や税制、国際交渉などに参画した人物。その後は、日米のマッキンゼーで4年半勤務。ウォール街に本拠を置く機関投資家を1年半サポートし、10兆円規模のリスク管理・資産運用プロジェクトに携わっていた、いわば金融のスペシャリストだ。2015年3月にマッキンゼーを退職し、4月にウェルスナビを創業した。
財務省やマッキンゼーに務める中で柴山氏が感じていたのが、「先進国の中で日本だけが、きちんと資産管理ができていない」ということ。消費税は上がり続け、退職金が出ない企業も増えた。また将来、年金がいくらもらえるのかも定かではない。そうした状況に多くの人が不安を抱える中、誰でも資産運用ができるサービスが日本にはなかったと柴山氏は振り返る。
日本では、個人金融資産の約8割を50代以上の高齢者が保有していると言われている。そのため、各社の資産運用サービスも高齢者向けに設計されており、働き盛りの30~40代が定年退職や老後に向けて利用できるサービスはほとんど存在しない。また、銀行などでは自社の金融商品を売らなければならないというノルマもあり、中立な視点でのサービスを受けられないという問題もあると柴山氏は指摘する。
一方、富裕層向けのプライベートバンクでは個々のニーズにあった資産運用サービスを受けられるが、対象となるのは3億円以上の資産を持つ顧客であることが多い。それは3億円から1%の手数料を徴収すると300万円となり採算も取れるが、仮に1000万円の資産だと、1%では10万円の手数料しか得られず、プライベートバンクからすると“割に合わない”ためだ。
そうした状況を変えるために柴山氏は、独自のアルゴリズムによってシステムを自動化し、誰でも低価格で利用できる資産運用ツールの開発に着手したという。想定するユーザーは、1000万円以上の資産を保有する30~40代のビジネスパーソンで、将来的には少額にも対応していきたいという。マネタイズについては、プライベートバンクと同様に預かり資産の1%程度の手数料を徴収する予定で、資産運用会社からは一切手数料や広告料を受け取らないとしている。
「財務省(当時は大蔵省)の時も政府として資産運用をどうにかしたいと思い、マッキンゼーでも金融機関にそう呼びかけてきた。しかし、一般消費者では採算が取れないので、どうしても富裕層向けのサービスになってしまう。その中で、世の中で提供されているさまざまな金融インフラのパーツを集めれば、こうした課題を解決できるのではないかと考え、創業を決めた」(柴山氏)。
米国では、こうした資産運用サービスは「ロボットアドバイザー」と呼ばれており、誰にでも利用可能なプライベートバンキングとして、ここ2~3年で急速に成長しているという。具体的には「Wealthfront」「Acorns」「Personal Capital」などのサービスが該当するが、柴山氏はWealthNaviによって、日本の有力なロボットアドバイザーのポジションを狙いたいとしている。
「昔は手紙は貴族しか送れなかったが、いまでは郵便や電子メールによって誰でも送れるようになった。富裕層しかできなかったこと、特権だったものが誰でも使えるようになる。そんなイノベーションを金融サービスで起こし、次世代のインフラを作っていきたい」(柴山氏)。
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