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選択肢が増え変化するゲームクリエーターの在り方とは--大手から独立した3人が対談 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2015年08月25日 15時34分
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クラウドファンディングがもたらすものと課題

 五十嵐氏のBloodstainedとイシイ氏がUnder The Dogは、ともにKickstarterによるクラウドファンディングで資金を調達した。それらにまつわるエピソードも語られた。

 五十嵐氏のBloodstainedの資金調達は550万ドルにもおよび、これは鈴木裕氏の「シェンムーIII」がサクセスするまで、Kickstarterにおいて最も資金を集めたゲームだったという。この結果は五十嵐氏自身も全く予想しておらず、そのためリワードの項目が増加。開発スケジュールの見直しを迫られ、今まさに取り組んでいるところだという。

  • イシイジロウ氏

 イシイ氏も同様にUnder The Dogの資金調達がサクセスした一方、やはりスケジュールの見直したと語った。ことKickstarterが米国のサービスであり、制作コストよりも支援者であるバッカーと英語でコミュニケーションを取るためのコストが予想以上にかかるという。ほかにも税金の問題や流通(製品の発送)といった制作以外のコストの管理や見直しが大変だとした。

 イシイ氏はクリエーターの立場からすると、クラウドファンディングはクリエイティブ以外の大変さもあるとし「もう一度やるかと聞かれたら、相当な覚悟が必要」としながらも、資金調達のオプションはクリエーターからすれば、選択肢の自由度を持てるという意味でプラスだとした。

 詳細は明かさなかったものの、内田氏は「クリエーターが作りたいもの、やりたいことを提示し、それに共感したファンと関係を形成し、ビジネスにつなげる仕組みを、既存のクラウドファンディングとは別の形で作りたい」と新たな考えを示した。イシイ氏は日本において、同人誌即売会などの自費出版から人気を得て法人化したサークルなどの事例に触れ、支持者を証明する仕組みはクラウドファンディングも含めて、思ったよりもいろいろとあると言及。五十嵐氏もクラウドファンディングは、大手パブリッシャーからの支援を受けやすくするために、ニーズを証明する意味で行ったと語った。

 クラウドファンディング大手のKickstarterは、基本的に米国の社会に適したサービスであるため、課題も多いという。イシイ氏は制作物の著作権は米国の会社で管理しなければならず、法人の設立しなければならない点を指摘。こういったことから、日本でもクラウドファンディングやドネーションの仕組みができつつあるが、さらに定着できるよう立ち上がるべきと主張。もっともアドベンチャーゲーム「Dies irae」のアニメ化プロジェクトが、国内のクラウドファンディングサイトで約9650万円を調達した事例も出てきており、発展する可能性に期待を寄せていた。

加速するクリエーターの流動性

 ここで黒川氏が、大手メーカーが独立した個人のゲームクリエーターと組んで開発すること、あるいはゲームクリエーター側がパブリッシャーを選ぶ形で開発することは可能かを質問した。

 五十嵐氏は、クリエーターは常に未来を見据えているのに対し、投資する側が重視するのは過去のデータとし、実績のあるクリエーターであれば信用度も高く可能性はあるという。内田氏は映画や音楽などの事例に触れ、クリエーター個人とパブリッシャーという関係性が加速すると展望と語り「そのほうが双方が幸せな形になる」との見解を示した。

 イシイ氏はこの関係性の成功事例として、「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズで知られるソラの桜井政博氏の名前を挙げた。イシイ氏はゲーム開発において最も大変なことは環境(チーム)を作ることであり、それがゆえ資本に縛られてしまうという。またチームとして囲うことによっていいゲームを作りやすくなる一方で、法人化するリスクもともなう。イシイ氏は桜井氏のように、ディレクターの立場としてプロジェクトに応じて環境を作りゲームを生み出すような人材が増えてくれば、この関係性が活性化すると推察する。

  • 内田明理氏

 イシイ氏は、ソーシャルゲームはコンシューマゲームのノウハウが使われてないと指摘。さまざまなソーシャルゲームのヒット作は生み出されたものの、それはブームにはなったもののIPとして心の残るものだったかといえば、そうではないという。一方でたとえばファイナルファンタジーシリーズやメタルギアシリーズなどなどは人の心に残るものとして話題となり、しいてはそれらのタイトルに感動して憧れてゲーム業界に入ってくる人もいるという。このようなループにスマートフォン向けゲームが加われるようになれば、クリエーターの流動化がより大きな枠組みで行われるようになり、クリエーターにとっていい環境になるのではと語った。

 内田氏はスマートフォンの存在に触れ、空き時間になんとなく立ち上げる暇つぶしに使われることについて言及。決して暇つぶしを否定するつもりはないとしながらも、日常のあらゆる隙間時間に使われており、それはゲームだけではない。そうなるとスマートフォン上にあるコンテンツ全てが競合になるという。そうした中、イシイ氏が提唱する“感動させるコンテンツ”をどう結びつけていくか、スキマ時間の奪い合いの中で、どう割り込み愛着を持ってもらえるのか、それを真剣に考えていく必要があるとした。

 イシイ氏は、前述のFate/Grand Orderが30分近く物語が展開しそれを読ませる場面があるという。スマートフォン向けゲームにとっては御法度ともいえるところだが、セールスランキングで1ケタ台を維持している状況に触れ、適正なユーザーに向けたものを作ってアピールをできれば、ストーリー重視であっても支持を得られて結果も残せる状況になりつつあるとした。

 今後の活動に触れるなかで、イシイ氏はアニメ版モンスターストライクとは別に、もう1本こだわりの作品を、205年内に発表することを明らかにした。また五十嵐氏は近いうちにモバイル向けのタイトルをお披露目できればとした。Bloodstainedについてはまだまだこれからとしながらも、8月に米国シアトルで開催されるゲームイベント「PAX Prime」で新情報を発表するとのことだ。

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