富士通が、文教向けに特化したタブレットPCを開発中であることを明らかにした。小中学校や高校で児童生徒が使う学習者用タブレットPCとして、ハードウェアの設計自体を最適化したモデルを、2015年中にもリリースする予定だ。
同社は、全県立高校で1人1台PC環境での授業を行っている佐賀県や、区立の小中学校すべてにタブレットPCを配布した荒川区などに端末を提供している。佐賀県には約1万4000台、荒川区には約1万300台の10.1型タブレットPC「ARROWS Tab Q584」を導入した。ARROWS Tab Q584は一般向け、法人向けにも販売しているモデルだ。
開発中の文教専用タブレットPCでは、これまでの学校への大規模導入で得られた知見を生かして、学校で児童生徒が使うのに最適なハードウェア設計を追及する。
「学校現場で求められるタブレットPCの要件は、一般向けや法人向けとは異なる」と、同社 公共・地域営業グループ 文教ビジネス推進統括部 統括部長 兼 小中高ビジネス推進部 部長の纐纈芳彰氏は説明する。
例えば、iPadやSurfaceなどの汎用タブレットPCが追及している「薄さ」「軽さ」は、実は学校現場ではそれほど重要ではない。それよりも、ランドセルや鞄に無造作に放り込んでも壊れない「堅牢性」、プールや校庭でも使える「防水」「防塵」の機能、1台の端末を複数人で使う場合にアルコール消毒が可能な「耐薬品性」などにニーズがあるという。
また、学習者用タブレットPCではペン入力の利用頻度が高いため、ペン入力時の書き心地を改善してほしいという要望が多い。体育館など薄暗い場所で動画撮影ができるカメラや、太陽光の下でも見やすいディスプレイも求められている。
文教用途への最適化と同時に、同社が取り組んでいるのが端末の低コスト化だ。薄さ、軽さなど学校現場で重視されない要素を取り入れないことで、汎用タブレットよりも安価で、全国の自治体が現実的に導入可能なハードウェアを目指すとする。
同社が文教市場で売りたいのはタブレットPCだけではない。将来的には、タブレットPCをエンドポイントとして児童生徒の学習ログデータをクラウドに吸い上げ、蓄積されたデータの分析から得られたナレッジで教育を改善するデータ分析ビジネスに文教事業を発展させたい考えだ。
学習ログデータ分析ビジネスを実現するためのファーストステップとして、同社は2014年10月から「明日への学びプロジェクト」を行っている。同プロジェクトでは、国内小学校5校と海外1校に、教員用タブレットPC、学習者用タブレットPC、サーバを無償提供し、同社が開発した学習支援ソフト「K-12 学習情報活用 知恵たま」を使って、児童の学習履歴、教員の指導記録などのデータを蓄積している。
「今後は、タブレットPCとソフトウェア、データを蓄積・分析するクラウドサービスとネットワーク、データ分析で得られたナレッジ提供までを、年額制のサービスとして提供していきたい」(同社 行政・文教システム事業本部 本部長代理の中尾保弘氏)
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