「Sprintを買ってよかった」--孫正義氏、米国のモバイル市場で再起誓う

藤井涼 (編集部)2015年08月06日 20時55分
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 「Sprintを売る気はまったくない。買ってよかったと正直思っている」――ソフトバンクグループ代表の孫正義氏は、8月6日に開催された決算会見で、米国の通信子会社Sprintの“売却節”をきっぱりと否定し、同社の再建策を説明した。


ソフトバンクグループ代表の孫正義氏

 ソフトバンクは2013年7月に米国3位の携帯キャリアSprintを買収。さらに4位のT-Mobile USを買収し合併することで、“2強”のVerizonとAT&Tに対抗しようとしていた。しかし、米規制当局による認可を得られず、2014年8月にこれを断念した。

日本の“成功パターン”でSprintを復活

 合併を諦めた際には、「自信をなくし、Sprintを手放すことまで覚悟した」と振り返る孫氏。しかし、日米の経営陣で徹底的に議論したことで、改善案を見つけたと語る。それは、ソフトバンクがボーダフォンを買収し、低迷していた業績を大きく改善させた“日本の成功パターン”を、Sprintに持ち込むことだ。

 具体的には、Sprintの営業費用(OPEX)と設備投資(CAPEX)の大幅な削減を目指す。孫氏は、「売上は急には増えない」と話し、まずはSprintの営業費用を下げ、少ない設備投資で米国ナンバーワンのネットワークを実現させると話す。詳細は明かさなかったが、Sprintの持つ2.5GHzの周波数帯を活用した次世代ネットワークを準備しているという。

 「通信事業者の最大の製品はネットワーク。それが悪いといくら上手にマーケティングや料金競争をしても一時的な効果にすぎない。真剣に考え、ついに最小限の設備投資で、最強のネットワークを作れる設計図ができた。従来、Sprintが持っていた設備投資計画よりも大幅に金額を減らし、期間も短縮する。それでもなお、ライバル企業を超えるネットワークを作れる」(孫氏)。

 また、端末の販売方法を変えることで必要な資金を圧縮する。いまでは日本でも米国でも、端末代金を分割で支払う「割賦販売方式」が主流だ。しかし、Sprintでは2014年8月にCEOに就任したマルセロ・クラウレ氏が、企業が端末を購入して消費者に有料で貸し出す「リース販売方式」を開発。その資金を賄うために、端末のリースカンパニーを設立準備中だという。これにより同社の純有利子負債を削減できるとした。

 孫氏は、ソフトバンクの傘下になってからのSprintの実績も紹介。マイナスが続いていた純増数(ポストペイド)は、マルセロ体制後にはプラスに転じており、解約率も過去最低の水準だと説明する。また、営業利益も黒字になっていると語り改善傾向にあるとアピールした。

「心がウキウキして、嬉しくてたまらない」

 「長く暗いトンネルだが、そのトンネルの向こうの光が見えてきた」と孫氏は話す。実は、十数年前に赤字続きだった「Yahoo! BB」の再建策を見出した時にも使った言葉なのだという。その2年後にYahoo! BBは実際に黒字化したことから、Sprintも2年後には状況が大きく変わっているだろうと語り、「必ず改善してみせる」と意気込んだ。


 「皆さんは何を強がっているのかと思っていると思う。具体的なものを詳しく見せているわけではないし、何か大幅に改善したことを実績で見せているわけでもない。今の状況でそんなに嬉しそうな顔をされてもと思うかもしれないが、いまの気持ちはYahoo! BBのどん底のところから改善の設計図がみつかり光が見えたところ。心がウキウキして、嬉しくてたまらない」(孫氏)。

 なお、ソフトバンクの2016年第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.8%増の2兆1390億5800万円、営業利益が同7.6%増の3435億5200万円、純利益が同175.1%増の2133億8200万円で、増収増益となった。同日には、ヒト型ロボット「Pepper」が決算を説明するというサプライズな演出も用意された。

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