では、継続的改善に成功している会社とは、どんな組織なのか。鬼石氏が挙げるのは、「フロー化(非属人化)」「チームで実施」「外部をうまく活用」「無理せず挑戦できる文化」の4つ。これらをまとめて、鬼石氏は「コラボレーションの時代」と呼んでいる。社内の理解を得て、A/Bテストを用いた継続的改善を文化として根付かせることが重要なのだという。
こうした継続的改善が難しいのは、それぞれのステップに時間とコストがかかることにも原因がある。たとえばひとつの改善を行う場合、アナリストやデータサイエンティストが解析ツールを使って課題を発見し、UIデザイナーやマーケターが解決策を具体的なデザインに落とし込み、エンジニアがツールを使ってA/Bテストを実施してデータを収集するという流れがあり、全体としてかなりの時間的・金銭的コストが発生する。
Kaizen Platformでは、自動化・クラウドソーシング化することで、これら各ステップにおけるコストを軽減している。また、多数のグロースハッカーの力を借りることで、「女性特化」や「EC特化」など、ビジネスに合わせた専属チームをつくることも可能だと鬼石氏はアピールする。
実際の改善事例を紹介しよう。たとえば、トップページの回遊率の改善を目標としたページでは、グローバルナビのデザインにのみ絞ってA/Bテストを実施。トップページでいかに離脱させないかに注力した結果、ボタンを大きく、コントラストを高めたデザインがもっとも改善した。重要なのは「範囲を絞り込んだ」ことで、これによりグローバルナビにおける効果が測定できたのである。
また、トップページでの動画再生数を増加させることを目標とした事例でも、範囲を絞り込んでA/Bテストを実施。この場合は、動画画面を大きくしたほうが効果が高いことが判明したという。
宿泊施設の予約サイトのような、動的に検索結果が変わるページにおいても、A/Bテストは可能である。値段を目立たせたり、タグをわかりやすくすることで、詳細ページへの遷移率は約70%も変わったという。
入力フォームにも改善の余地がある。最終的な申し込みのボタンの色を緑にするだけで、申込数は増加。ただし、これは周囲の色とのコントラストを高めたためで、つねに緑が良いわけではないと鬼石氏は補足した。
面白いのは、男女や年齢などの属性によっても結果が変わることだ。たとえば旅行会社のページでは、トップに飛行機の写真を大きく見せると男性に効果が高く、女性にはあまり響かなかったという。逆に価格を訴求すると、男性にはそれほど効果がなかったが、女性には効果が現れた。セグメントを分け、同じクリエイティブを用いてテストすることも有効だと鬼石氏は語った。
最後に鬼石氏は、「ツールを入れるだけで終わりではなく、その会社にあった組織、風土、ルール、体制、フローをいかに作れるかを考え続けていただきたい。正解というものはなく、自社にあった体制が作れるかがポイント」と述べて、講演を締めくくった。
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