企業がプロダクトを開発する上でとりわけ重要な役割を担うのがCTO(最高技術責任者)だ。高い技術スキルを持つだけでなく、エンジニアのチームを統括するリーダーとしての素質や、中長期的な戦略や開発方針を決めるための“先見の明”も求められるポジションである。
スタートアップ特化のソーシャルリクルーティングサービス「Ambitious(アンビシャス)」を運営するワイルドカードと、教育と異文化領域に特化したインキュベーションを展開するヒトメディアは11月21日、急成長するスタートアップ企業5社のCTOを招いたトークイベント「アンビシャス・セミナー ~REIMEI~」を開催した。同日は、5人の登壇者がCTOを務めることになった経緯や、自身が尊敬するCTOについて語った。
この日登壇したのは、主催者であるヒトメディアの瀬川雄介氏、不動産ポータルサイト「ietty」を運営するiettyの戸村憲史氏、コンテンツマーケティング事業を展開するイノーバの佐藤公哉氏、GIFアニメの投稿・共有サービス「GIFMAGAZINE」を運営するクリエイティブボックスの中坂雄平氏、オンライン英会話「ベストティーチャー」を運営するベストティーチャーの今佑介氏の5人。
まず、テーマとして挙げられたのが「エンジニアがCTOになる方法」についてだ。結論から言えば、5人ともエンジニアやCTOを探していた社長から声をかけられたり、知人から紹介されたことがきっかけで、結果的にCTOに就任したのだという。少数精鋭のスタートアップ企業ならではの共通点とも言えそうだが、歩んできたバックグラウンドはそれぞれ異なる。
iettyの戸村氏は2007年から5年間、CSK(現SCSK)でSEを経験したのち起業を決意。メンバーも集まりベンチャーキャピタル(VC)からの投資も決まったが、「シードラウンドでの調達だったため給料が払えないということで、サービスを作ろうと思ったタイミングでクビになった」(戸村氏)。途方に暮れていたところ、投資をしてくれたVCにietty代表取締役社長CEOの小川泰平氏を紹介され、2012年にCTOとして入社したのだという。
ベストティーチャーの今氏は、大手企業のSEだったが、ベンチャー企業で働きたいという思いから4年前に転職。その後、いくつかのウェブサービス会社を経験した後、2014年7月にCTOとしてベストティーチャーに入社した。「フィリピンに短期留学した際に、英語力を身に付けるためにオンライン英会話サービスを色々試していて出会ったのがベストティーチャー。その後の開発勉強会でたまたま(代表取締役社長の)宮地と知り合い、独立するCTOの後任を探していると聞き入社を決めた」(今氏)。
イノーバの佐藤氏は、もともと音楽好きでDTM(デスクトップミュージック)の演奏などをしていたところから、IT企業のエンジニアへと転身。ただし、自身について「基本的にサラリーマンができない」と話すように最初に入った企業は約半年で退職。それからは主にフリーランスのエンジニアとして活躍していたが、イノーバのCOOが大学時代の友人であったことをきっかけに同社へ入社したのだという。「エンジニアとして最初に採用されたのでCTOになった」(佐藤氏)。
さまざまな経緯でスタートアップ企業のCTOとなった5人の登壇者だが、後に続くエンジニアたちはCTOを目指すべきなのだろうか。
この問いに対し、ヒトメディアの瀬川氏は、どの業務に重きを置いているかで目指すべきかどうかが決まると話す。「僕がCTOになったのは、単純にモノ作りだけでなく、インフラや他の分野も含めて守備範囲を広げたかったから。そのあたりの変化もすべて受け入れてやってみたいという思いがあればぜひトライすべき」(瀬川氏)。ただし、コードを書く量は減ってしまうため、開発のみに専念したい人には向いていないかもしれないと付け加えた。
また、クリエイティブボックスの中坂氏は、「僕自身、CTOとしての肩書きはあるが、会社の規模がまだ小さいので企画も開発も何でもやっている。規模が小さいうちは自分が一番できて、周りも見れないといけないので、(CTOを)“目指す”というより“なっちゃう”のかなと思う(笑)」と語る。
イノーバの佐藤氏は「僕はビジネスモデルも自分で作れるCEOを目指すべきだと思う。CTOだとまだ志が低い」と持論を展開した。
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