Mozillaは先頃、「Encrypted Media Extensions」(EME)と呼ばれるウェブ標準を「Firefox」ブラウザに組み込むことに同意した。これは、Netflixなどのオンラインサービスが配信する、コピー防止が施された動画の利用を可能にするための対応だ。
EMEは、コピーを制限したり、動画を視聴する権利を一定時間経過後に無効にできるようにするデジタル著作権管理(DRM)タスクをブラウザが実行できるようにするテクノロジだ。MozillaはこれまでEMEに反対してきたが、米国時間5月14日、EMEを採用すると発表した。EMEは広範に利用されるようになってきており、Firefoxが同テクノロジを採用しないとユーザーがほかのブラウザに乗り換えてしまうおそれがあるためだという。
最高技術責任者(CTO)のAndreas Gal氏は、「競争の激しいブラウザ業界を見渡すと、ブラウザ市場の主要なプレーヤーはすべてEMEとそれに伴うモジュールを既に採用している。われわれが懸念しているのは、MozillaがEMEを採用しなければ、Firefoxユーザーはウェブの重要な部分にアクセスすることができない、ということだ」と述べた。Mozillaはウェブ上のオープン性を支持している。特許でがんじがらめにされたプロプライエタリなソフトウェアはそれと正反対のものだ。
MozillaがDRM暗号化ソフトウェア自体を記述するわけではない。Firefoxのようなオープンソース製品にDRM暗号化ソフトウェアを搭載することはできないからだ。その代わりに、MozillaはAdobe Systemsと連携して、同社のモジュールをインストールする。このモジュールは、Adobeが同社の「Flash Player」ブラウザプラグインに搭載しているものにかなり近い。ユーザーがFirefoxをインストールした後、同ブラウザはDRMモジュールをダウンロードするが、同モジュールは、EMEを使用するサイトをユーザーが訪問し、許可を与えた場合にのみ有効化される。
従来、DRMを求めるストリーミングビデオサイトは、AdobeのFlashやMicrosoftの「Silverlight」などのブラウザプラグインを使用してきた。しかし、Adobeのブラウザプラグインは、デスクトップブラウザや新しいウェブサイトから徐々に排除されている。Appleの「iOS」やMicrosoftの「Windows Phone」、Mozillaの「Firefox OS」、Googleの「Android」を搭載するモバイルデバイスでは、Flashは全く動作しない。こうした状況は、ウェブを汎用のコンピューティング基盤にすることを望む人々にとって、厄介な問題となっている。
GoogleやMicrosoft、Netflixの一部の開発者が代替テクノロジであるEMEの開発に取り組んできたのは、そのためだ。
EMEはWorld Wide Web Consortium(W3C)を通して標準化されており、現在ドラフト段階にある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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