コワーキングという働き方は、既存の組織に新しい刺激や交流を生み出すきっかけを与えてくれる。渋谷にある「gooya CREATER’S HUB」は、企業がコワーキングの文化を取り入れることで、その刺激やきっかけを生み出しているスペースだ。
gooya CREATOR'S HUBを運営するのは、プレゼント宅配サービス「GiftNow」などを手掛けるgooyaだ。2012年に入り、オフィスの一部を起業したてのスタートアップに間貸ししていた同社。9月に増床したことを契機に、gooya CREATOR'S HUBとして、スペースを正式に運営していくこととなった。
同スペースでは、学生やスタートアップたちに対して、半年に限定してスペースを無料で提供する。「学生やスタートアップの人たちは、どう会社を経営していくのかということを実際に経験していない人が多い。だから、スペースの一角を使ってもらいつつ、会社の日々の様子、事業運用の方法について学んでもらいたいと思ったのがきっかけ」――gooya代表取締役の杉村隆行氏はこう語る。
gooya CREATOR'S HUBへの入居は、杉村氏のブログやTwitterなどでの募集が中心。その後に杉村氏自らが面談し、入居の有無を決める。大々的な広報はせず、口コミなどを通じて入居する人たちを呼びかけている。募集対象となるのはIT関連企業が中心で、gooyaと入居者が相互に企業を紹介するなどして、新しいビジネスが生まれる事も少なくない。
「基本は自分たちの事業を優先しており、(CREATOR'S HUBは)空きスペースの有効活用。だが、『お金をとる』というのではなく、あくまで『間借り』という関係。また、期間を半年に区切っているのは、『半年でなにかしらの利益をだせなければ事業は諦めたほうがいい』という先輩起業家なりのメッセージも含めています」(杉村氏)
スペースの運営で収入を賄うという発想ではなく、無料で貸し出すことで成長のサポートするというのがそもそもの考えだ。また外部の、しかも起業したばかりという若い人たちと交流することで、gooya自体も大いに刺激を受けているそうだ。毎週開かれるgooyaの全社会議にも、スタートアップを参加させる。その中で、企業の会議のあり方や会計報告などを学ばせている。
同スペースに入居するスタートアップの1社であるInnoBetaは、スマートフォンアプリのユーザビリティーテストサービス「UIscope」を提供している。
都内にはさまざまなシェアオフィスやコワーキングスペースが生まれつつある。そんな中で同社はなぜgooya CREATOR'S HUBに入居したのか。InnoBeta CEOの平石大祐氏は、「成長企業と空間を共有できること」が理由になったと語る。
「スタートアップだからこそ、すでに最前線で働いている企業の日々の活動から学べるものがある。そこから、経営をはじめとした『企業』の仕組みを経験させてもらっている。売上目標や現状の数字の報告、会社としてのKPI設定など、事業を展開していく中で必要なものを実戦で得られることは大きい」(平石氏)
スタートアップにとっても、企業としてのあり方を学んだり、相談したりできるという価値は大きい。同スペースに入居することで、スタートアップにとってお金では得られない経験ができることは大きい。一方で入居者らが独自の勉強会などを企画し、gooyaの社員らとお互いに刺激しあえる関係を構築しているという。
杉村氏自身も、8年前に自ら起業して今に至る。だからこそ、スタートアップが抱える課題について「人一倍理解している」と語る。起業家の先輩として、成長している自らの企業としての姿をスタートアップに見せ、彼らを応援しているのだという。
「自分たちの成長の一部をスタートアップに還元する。それくらいの余裕を持たせないと、自らが成長していけなくなってしまう。同時に、『起業家支援の精神を持つ企業』のあり方を示すことが、業界全体を盛り上げる1つの要素になればいい」(杉村氏)
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