メッセアプリの内容を運営会社が利用することは適法なのか

弁護士ドットコム2012年11月09日 13時37分
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 主にスマートフォンにて、ユーザー同士が無料で通話できたり、多彩なイラストやメッセージを手軽にやり取りすることが可能な、メッセンジャーアプリと呼ばれるアプリケーションサービスの利用者数が急速に増加している。

 NHN Japanが提供する「LINE」では、今年10月に全世界での登録ユーザー数が7000万人(うち国内ユーザー数は約3200万人)を突破し、カカオジャパンとヤフーが共同提供する「カカオトーク」も今年9月末時点の全世界での利用者数が約6500万人と、LINEに匹敵するユーザー数を抱えている。また、ディー・エヌ・エー(DeNA)も10月23日より「comm」の提供を開始し、配信開始初日に日本国内のApp Store無料総合ランキングで1位を獲得した。

 このように高い人気を集めているメッセンジャーアプリだが、実はそれぞれの利用規約を見ると、各社によって対象範囲は異なるものの、ユーザー同士がメールやチャットでやりとりした内容の一部は運営会社に利用権限があるとされており、一部のユーザーや有識者から懸念の声が挙がっている。

 先日にはcommの利用規約について、当初の内容が「当社は、すべてのcomm会員記述情報を無償で複製その他あらゆる方法により利用し、また、第三者に利用させることができるものとします」となっていたことが物議を醸し、その後同条項は「当社は、すべてのcomm会員記述情報を本サービスの提供を目的とする範囲において無償で複製その他の方法により利用できるものとします。ただし、comm会員間でメール・チャットによりやりとりされる情報を、令状等による場合を除き、当社、第三者が閲覧することはありません」と改定されることになった。

 そもそも、電話事業者やプロバイダーなどの電気通信事業者は、電気通信事業法により「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」と規定されているが、はたしてメッセンジャーアプリでユーザー同士がメールやチャットでやりとりした内容を運営会社が利用することは、通信の秘密を侵すことにならないのだろうか。高橋郁夫弁護士に聞いた。

ユーザーの合意があれば、違法性があるとはいえないと解されている

 「電気通信事業法4条は、電気通信事業者の取扱中にかかる通信の秘密について、積極的取得、漏えい、窃用の禁止を定めています。まず、運営会社は通信の当事者(メールやチャットなどで情報を送受信する者)ではないかと考えることも可能ですが、本件のような『ミニメール』に関して、CGM運営者が、通信当事者であるとは考えないとするのが一般でしょう」

 「次に、内容を運営会社が『利用』することについて、サービスの利用規約とそれにもとづく利用者の合意はどのような意味を有するのかということが問題になります。電気通信事業法上、禁止される『窃用』(自己または他人の利益のために利用すること)行為に該当するとしても、同意があれば、違法であるとはいえないものと解されています。もっともこの同意については、抽象的なものでいいのか、具体的なものでなければならないのかという争いがありますが、解釈論として明確なものはないといえるでしょう」

運営会社の内容確認には、青少年保護の観点がある

 「ところで、上記規約では、『サービスの提供を目的とする範囲』とされていますが、あまり明確ではないところです。サービスの向上、マーケティング目的、広告送付から、未成年者の出会い系からの保護までを含むということがいえるでしょう。このような目的に応じて、通信当事者の通信の秘密に対する合理的な期待がどのようなものであるかという観点から、同意の具体性の必要度合いを考える必要があるといえるでしょう」

 「この点については、参考文献における総務省のいわゆるライフログ研究会(利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会)においては、『ミニメール』の内容確認の合法性を『青少年保護に向けた取り組み強化について』として論じているので、ぜひとも参考にしてもらいたいところです」

各サービスを利用する際にはしっかりと利用規約の確認を

 ユーザー同士がメールやチャットでやりとりした内容について、運営会社が利用することを明示した利用規約は運営会社のマーケティング目的のため、と見る人もいるかもしれないが、児童誘引行為の防止など青少年保護の観点からの利用が必要になる場合もあるので、必ずしも運営会社が優位に立ってユーザーに不利益を与えるものではないということだ。

 もちろん一方で、ユーザーの自覚がないままに通信の秘密が侵害されないよう警鐘を鳴らす意見も重要であり、運営会社にも細心の注意が求められる。

 利用規約をあまり読まずに登録しているユーザーもいるかもしれないが、このように重要な内容が規定されているので、各サービスを利用する際にはしっかりと利用規約を確認するようにしていただきたい。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】高橋 郁夫 弁護士(たかはし・いくお)
BLT法律事務所/宇都宮 大学大学院工学部講師。
情報セキュリティ/電子商取引の法律問題を専門として研究する。また、法律と情報セキュリティに関する種々の報告書などに関与。

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