ウォルマートの件は、生活者の信頼を裏切り炎上してしまった事例ですが、偽ったり欺いたわけでなく、炎上してしまった事例もあります。
2010年にTwitterを使用してキャンペーンを実施した、UCC上島珈琲の事例です。
「UCC“グッドコーヒースマイル”キャンペーン」の受付中だった2010年2月。応募総数を増やすため、Twitterに注目し、11個のアカウントを作り、bot配信(自動投稿)を行うことにしました。
この施策は、Twitterならこれまでと違うユーザー層にリーチでき、企画を盛り上げられるとキャンペーン開始後に考えられた追加施策でした。
このbotは、「コーヒー」「懸賞」「UCC」などのキーワードを含むツイートをしているTwitterユーザーを自社のキャンペーンに関心があるのではないかと想定して、キャンペーンの宣伝文を自動ツイートする仕組みでした。これらはすべてキャンペーン専用のアカウントで実施し、キャンペーンが終了した際はアカウントも削除する予定でした。
ところが、このbotを使った施策を開始した2010年2月5日10時、仕掛けた側が思いもよらないことが起こりました。
考えてみてください。「コーヒー」「懸賞」などは、一般的に使用されている単語です。UCCのキャンペーンに関係なく、会話の中に入ってくるであろう単語です。相互フォローしている訳でもないTwitterアカウントから、いきなり宣伝文が飛んできたらどうでしょう。土足で踏み込まれたような気分になりますよね。
せめて「UCCコーヒー」のように、ブランドに対して言及していればまだ良かったのかもしれませんが、一般的な単語をbotの収集キーワードに設定してしまったことと、11個ものアカウントが一斉に同じ宣伝文をTwitter上で了承を得ていないユーザーに“一方的に”送り付けた形になったために、突然自分のTL(タイムライン)にキャンペーンの宣伝文が現れたTwitterユーザーに火をつけ、すぐに炎上してしまったのです。
ここからがこの炎上解決の特筆すべき点です。UCC上島珈琲は、10時に開始した宣伝文の自動投稿をなんと1時間45分後の11時45分に停止措置を取ったのです。さらに素晴らしかったのは最高情報責任者に連絡が入り、事実確認後、同社の社長にまで事態の報告が上がったことです。謝罪文の掲出まで24時間かからずに対応しました。
相当に準備を重ね、多数の関係者もいたであろう、このTwitterbot追加施策。UCC上島珈琲だけで行ったわけではないものの、全責任はUCC上島珈琲にあると認めた上でのこの対応が、批判の声を称賛の声に変えたというわけです。
施策自体の考え方に問題があったのは事実かもしれませんが、その部分さえも認め、即座に停止し潔く謝罪した、という生活者にとって誠実な企業姿勢が伝わったからこそ、この件は最終的に企業のイメージアップにつながったのかもしれません。
これまで見てきた2つの事例の大きな違いは、発信する側の責任と対応の部分です。発信する側が最初から生活者に対して不誠実な態度であったかどうかが最後の対応まで大きく影響していたと考えます。
もちろん「クチコミ」は企業だけのものではありませんが、前述の事例のような企画をする側は、クチコミに関するガイドランについて見直してみることも大切です。
1つ目の事例でご紹介したWOMMAはアメリカの組織ですが、日本にもWOMJ(WOMマーケティング協議会)があり、ガイドラインを策定しています。そういったガイドラインを把握した上で、より良いクチコミがたくさん集まるような誠実なクチコミマーケティングを実施出来ればよいのではないでしょうか。
「信頼されるクチコミ」とは、何かが起こった時の対応や姿勢そのものが誠実であり信頼され、初めて、クチコミも信頼されることになるのではないかと考えます。
イソップ寓話の「オオカミ少年」のように、嘘ばかりのクチコミをしていて、本当に伝えたい大切なことがある時に、受け取ってくれる人がいなくなってしまうことがないように願いたいものです。
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