さる7月2日、ウェスティンホテル仙台でGoogleが開催した、自然災害とITをテーマにした国際会議「Big Tent 2012」では、様々な立場の人達が災害に関して意見を述べあい、全体のプログラムを通じで大きく4つの話題がとりあげられていた。
まず1つ目は、「オープンデータ」と「クローズドアーキテクチャ」について。使えるデータをアクセスしやすい形でもっと提供できるようフォーマットの基準を設ける、機械が読める形式にしてAPIも同時に公開する、著作権やライセンスなども合わせてクリアにするといった課題があげられた。そして、それを実現するには被災地や支援活動において、どのようなデータが必要とされ、活用されていたかを認知しなければならないという意見も多く出された。
そのためのガイドラインを国家レベルで構築するという話がある一方で、PDFでもワードファイルでも、音声や映像でもフォーマットにこだわらずに情報が取り扱えるようなシステムを構築している事例もあった。
たとえば、フィリピンのWHOで活動するイアン・ゴメス博士が紹介した、政府保健省とWHOが共同で運営する疾病早期警戒監視システムの「SPEED」は、テキスト、画像、音声データをネットで扱えるようにし、Googleマップとも連携できる一方で、手作業でペーパーを更新したり、無線を使えるようにしたりもしている。その結果、立ち上げから28カ月経過した現在は、国の健康調査票としても使われているという。
2つ目は「情報ソース」について。政府が発表する情報と、災害現場から発信されるクラウドソースとのバランスをどう取るのか、特に政府から適切な情報をいかに早く多く引き出すかが課題であるとされた。政府が必要な情報を出さない理由として、現場がパニックになるとよく言われるが、パニックは情報が隠ぺいされて不足している時にこそ起きやすいというのを認知させること。また、政府にはたくさんの情報が集まっているため、それらの中から適切な情報を選択して提供できるようにアドバイスするコーディネーターなどの必要性も提案された。
アジア財団でグッドガバナンスに関する数々のプログラムを支援しているミシェル・チャン氏は、昨年、大洪水に見舞われたタイでは、政府がNPOや官民のコーディネーションを活用して情報を市民に迅速に提供することでうまく対応したことを紹介。一部、うまくいかなかった部分の改善にあたってテクノロジが大切になるとコメントしている。
3つ目は、国や地域による「環境や文化の違い」について。どんなに素晴らしくても日頃使い慣れていない技術やサービスは、いざという時には役に立たない。災害の種類や状況によっても、活用できる技術は異なるので、現状に合わせたシステムを選択して活用することが大切であるということで、会場の意見は一致していた。
ITを通じて全世界150カ国で人道的な開発支援、災害救助の支援を行うNGOのNetHopeで緊急対応ディレクターを務めるギスリ・オラフソン氏は、情報共有と言っても国によってレベルが異なり、オンラインマップを公開するだけでも十分な地域があるという。また、いくつかの情報ソースからデータをマッシュアップした方が見えることもあり、何もかも集約するのではなく、多様性を持ちつつさまざまな技術を使えるようにすることも大切であるとしている。
4つ目は「コミュニケーションとコラボレーション」。すべてのセッションを通じて話題になっており、政府と支援団体、災害現場と技術者、個人とボランティア組織というように、あらゆるところでのコミュニケーションとコラボレーションは、ITを通じて活性化することができ、今後もその動きは加速されるであろうという意見も数多く聞かれた。
課題となるのは、災害という非常時において、いかにさまざまなことをスムーズに行えるようにするかということ。この点については、日頃から情報リテラシーやネットリテラシーを高めることが大切で、そのための教育システムの構築をどうするかは、もう一つの大きな課題であるとも言え、次のBigTentでのテーマとして取り上げられるかもしれない。
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