グリーとKDDIが2011年11月、ディー・エヌ・エー(DeNA)に対して、損害賠償を求めた裁判を提訴した一方で、DeNAも2月に入りグリーと同社代表取締役の田中良和氏に対する訴訟を提起。泥沼の訴訟合戦となっている。ではそれぞれの裁判にはどういう意味があるのか? オーセンスグループが運営する法律相談のポータルサイト「弁護士ドットコム」に、法律家からの視点で語ってもらった(編集部)
2011年11日21日、グリーとKDDIは、DeNAに対して、不法行為に基づく損害賠償請求の裁判を提起した。またこれに先立つ同年6月9日には、公正取引委員会がDeNAに対し、独禁法違反として排除措置命令を出している。
独禁法違反行為が行われた場合、競争関係にある事業者は、取引額が減少するなどの損害を被ることがあり、グリーらが提起した裁判も、DeNAの独禁法違反行為によって、ソーシャルネットワーキングサービスやソーシャルゲーム提供事業者との取引の売上げが減少したことを損害として損害賠償を請求しているものと考えられる。
損害賠償請求が認められるためには、DeNAの行為が違法であることが前提となるが、すでに公正取引委員会から排除措置命令が出されている場合、裁判においても排除措置命令の根拠となった違法行為の存在が事実上推定される可能性が高い。
また、一般的に公正取引委員会は、独禁法違反行為を理由に損害賠償を求める裁判については、排除措置命令書の謄本や違反行為を認定した根拠となる資料等を提供するなど、被害者の立証活動を援助する対応をとっている。そのため、状況としてはグリーらにとって有利な形となっているとも考えられる。
ただ、過去の裁判においては、たとえすでに独禁法違反を理由とした排除命令が出ており、違法行為の存在自体は認められたとしても、損害や因果関係の存在を証明することに失敗して請求が認められなかった例が散見される。そのため、グリーらの請求が認められるかどうかは、損害や因果関係の存在についての証明をどこまで行うことができるかがポイントであろう。
一方、今回DeNAがグリーおよび田中良和氏に対して起こした裁判は、謝罪文の掲載も請求していることからすれば、名誉棄損を理由とした損害賠償請求であると考えられる。詳細が公開されていないため不明であるが、DeNAのプレスリリース等を見る限り、2011年のDeNAへの排除措置命令に関連してなされた、「DeNAが独禁法違反行為を行っている」等のグリーによる言動が名誉棄損等にあたることを理由とした損害賠償請求ではないかと推測される。
ところで、法律上は一見名誉棄損に当たる行為であったとしても、一定の条件を満たした場合には適法な行為として名誉棄損等とはならない。
そのため、今回の件においては、公正取引委員会から排除措置命令が出されていることからすると、排除措置命令の根拠となったDeNAの違法行為に関するグリーや田中氏の言動は適法と判断される可能性が高いものと考えられる。
ただ、2011年に出されたDeNAに対する排除措置命令は、あくまでもすでに終了した過去の違法行為(いわゆる既往の違法行為)を理由とするものである。そのため、グリーや田中氏が、「排除措置命令以後もDeNAが独禁法違反行為を継続している」といったような言動を行っているとすれば、その点については名誉棄損行為と判断される可能性も十分あるものと思われる。DeNAが特に問題視しているのも、この点の違法性なのではなかろうか。
排除措置命令以後もDeNAが独禁法違反行為を継続しているという点については、直接的には排除措置命令が裏付けとならないため、もしこういった言動があったとすれば、この裁判においてグリーの側が自己の行為の適法性を立証していくためには相応の困難をともなうのではないか。
法律監修:法律事務所オーセンス
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