ネコワーキングの席数は約30席程度。フロア中央にある大きなテーブルと、集中作業スペースが数席ある。最も特徴的なのは、スペースの名の通り、猫が2匹いることだ。
なぜ、猫がスペースにいるのか? コワーキングスペースのオープンに向け、友人らにヒアリングしていたという広瀬氏。その中で友人の1人が「猫が居ると和む」と語ったのがきっかけだという。その後、大学院時代の友人であり、MBAを持つテレビディレクターに話したところ「ビジネス的な観点からも猫はお勧めしない。だけど、猫がいたら俺はその場所に行ってしまう」という“理屈じゃない”ひと言をもらったのが決定打となった。
「集中して作業し、休憩時には猫とたわむれることができるスペース」というコンセプトは周囲にも好評だった。大学院の教授でもあり、コンテンツビジネスに長年携わってきた吉田就彦氏も「猫を飼うだけではない、床材にこだわり、壁を塗ることは、人間の仕事する環境としてもいい場所になるのではないか」とアドバイスしたという。
そこで、保健所から殺傷処分待ちの犬や猫を保護するNPO法人ライフボートから里親を募集していた猫をひきとった。さらに壁には有害物質を含まないしっくいを塗り、床には杉の無垢材を使ったタイルを敷いた。窓には光触媒の塗料を塗るなど、設備を整えた。「No Creature(Cat)、No Communication、No Community、No Collabolation、No Creativityという指標がある。動物にとって居心地のいい空間はいい意味で人間にもプラスな効果を与えてくれる」(広瀬氏)
だからスペースも24時間オープンにはしない。「人間も自然の動物であり、その環境の“カナリア”として猫がいる。自然の動物のライフサイクルを守ることは、回り回って人間にとっていい環境を提供できる。また、猫がいることでスペースも和み、空気をいい意味で壊してくれる。会議をしていても場を和ませてくれるいい存在です」(広瀬氏)
ネコワーキングについて広瀬氏は、地域活性のための場所としての位置づけているという。「以前に東大の学生と、地元の和菓子屋とをつないで地域の“文豪スイーツ”などの企画作品を作ったら話題になった。異業種とつながることで新しいことが次々と生まれてくるし、そういうことを求めている人も多い。それらの拠り所になればと考えている」(広瀬氏)
また、スペースに対する考え方も、あくまで周囲の人々ありきだと語る。「ネコワーキング自体も、自分だけで作ったものではない。多様な人たちによってこの場所ができており、次第に文化が醸成されてきている。利用者みんなで作るからこそみんなにとって居心地のいい。あくまでそのお手伝い」(広瀬氏)。
地域を変えるためにはまずは人間自体の働き方が変わらないといけない。人間の働き方を変えるためには居心地のいい空間作りが大切になってくる。ネコワーキングは、猫と共存することが人間にとってよりよい場所になり、オフィス環境にとっても整った場所になっている。集中して作業してちょっとした息抜きをする、そうしたメリハリができるスペースは、現代にとって必要な場所なのではないだろうか。
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