ガバナンスの再構築という意味では、グローバル化に伴い企業のICTガバナンスも岐路に立っているといえるのではないか。日本企業のグローバル化は、生産拠点作りを主目的とせず、進出先を市場としてとらえたものに変化してきている。したがって、企業のICTガバナンスも「グローバルICTガバナンス」として考える必要がある。
グローバルガバナンスを進める上での基本方針を500社以上の企業のIT担当者に聞いた調査結果の一部が、モデレーターの舘野氏から示された。これはITRが実施したものだ。
質問は、「グローバルガバナンスについて、現在はどう考えているか」そして「今後はどうしようと考えているか」というように現在と今後についてそれぞれ分けて聞いている。
「『日本から全世界の情報システムを統括管理する』と考えている企業は『現在』では53%。『今後』では37%に減少している。『今後』の中で増えているのは、『国外の拠点から全世界を見る』『国内と国外の2極体制で統括管理する』といったものが挙がっている」
日本国内(本社)から全世界の情報システムを統括・管理しているとした企業は、現在は5割を超えているが、今後の見通しでは3割台に減少。将来は日本の本社から情報システムを統括管理しようとする企業ははっきりと減少していく。(2011 ITR)
『グローバルでITガバナンスを実施していくときに、どういう体制で行いますか』という質問に対しては、『現在』では、『本社のIT部門の体制強化によって進める』とする企業が約60%。しかし『今後』では約40%に減少している。その一方で『(今後)海外のIT部門もしくは海外の子会社を体制強化していく』と答える企業が、現在、同様の方針を持って取り組んでいる企業の約2倍多い。(2011 ITR)
この結果から、グローバル化に取り組んでいる企業の多くは、ICTガバナンスを変えていく方針を明確に持っていることになる。
浅井氏はガバナンスという言葉のとらえ方が変化してきているのでは、と指摘する。
「ガバナンスは統括管理するというだけでなく、投下される資本に応じた利益を生み出すことも含まれる。そうしたことが明確に意識されるようになった結果がこのアンケートに示されているのだと思う。IT部門も他部門と同様にビジネスを生み出し、成果を挙げることが求められている」
星野氏は、花王の例を挙げて次のように話す。
「同社は2008年か2009年ころに、システムだけでなくビジネスプロセスもアジア地域で統一した。そのシステムは日本で標準化されたものではなく、アジアの各地域でオーソライズされてきたもの。日本の人たちはかなり抵抗したというが、結局はトップが押し切った。結論からいえば、そういうことをしないと、海外市場で競合企業には勝てないという判断があったということだ」
「(日本の)本社発」のシステム、ビジネスプロセスで世界市場を統括するというガバナンスは、早晩どの企業にとっても時代遅れのものになる。それを見越した戦略が必要になるということだろう。
次回後編では、引き続きITRの調査結果からグローバルICTガバナンスの今後の方向性、そして今後ますます注目されるクラウドの活用法、そしてこれからのICTパートナーの条件などについての議論をお伝えする。
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