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祝なでしこジャパン世界一! 「Nadeshiko」に見る日本のPRの可能性

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 梅雨が明け猛暑が始まり、迎えた3連休から明けた日本。世間では、「なでしこジャパン」のワールドカップ優勝の話題が席巻している。

 この快挙は、大震災から4カ月が過ぎた日本にとって、本当に勇気づけられる贈り物のような意味を持っていた。佐々木監督、大活躍の澤選手以下、チームと関係者の皆様には心からの敬意を称したい。

 この快挙、日本人なら誰しも嬉しいニュースなのはもちろんだが、私が少し驚いたのは予想以上に海外からの反応が大きいということだ。海外での大きな報道もさることながら、例えば私の所属するPR会社グループは本社を米国に持ち世界展開するグローバル企業だが、決勝が終了するやいなや「おめでとう!」のメールが次々に届いた。

 他の外資系企業に勤める知人にも同じようなことはあったようで、中には、「何を『おめでとう』と言われているのか、一瞬わからなかった」という声もあったくらいだ。もちろん、震災後の日本を応援したい気持ちが世界にあるという認識はあったものの、あらためてその「空気感」を感じた経験だった。

 ここで面白いのは、このニュースを通じて、日本チームの愛称である「Nadeshiko(なでしこ)」への興味も喚起されているように思えたことだ。

 2004年から正式に使われているこの愛称は日本人にはお馴染みだが、日本以外の人たちにとっては単なる「記号」でしかない。それが「日本人女性」を古来から表現するコトバであることを理解し、さらには、ひたむきに戦った日本チームの姿と重ねることで、より大きな納得と共感が生まれるように思える。

 これは、「女子サッカーが強い」という認識の枠を超えて、より深い「日本への理解や共感」につながるポテンシャルを持っている。私はここに、「世界にむけた日本のPR」のひとつのヒントが隠されていると思う。

 この快挙をスポーツの話題で終わらせず、むしろこれをフックにして、「Nadeshiko」というコンセプトを通じた日本女性の素晴らしさ、日本文化の素晴らしさへと文脈を広げることは可能なはずだ。

 ひとつの例をあげよう。「kawaii=カワイイ」というコトバは、もはや世界語になったと言ってもよい。日本のポップカルチャーやファッションに端を発したいわゆる「カワイイ(kawaii)ブーム」は、そもそも日本の若者カルチャーに親しみを持っていたフランスやイタリアなど、ヨーロッパの国々から火がつき、それがアメリカやアジアまで広がった。

 原宿のカリスマショップ「6%DOKIDOKI」が昨年サンフランシスコで行ったイベントは大成功をおさめ、中国でも上海では多くの若者に「kawaii」という言葉は定着しつつある。

 このムーブメントは、結果として「日本という国のPR」に大きく寄与した。結果論ではあるが、kawaiiの広まりは日本に対する共感を醸成し、関連するビジネスも活性化させた。

 戦略的なPRというものは、コンセプトが共感を得ながら自走して拡散し、その結果、対象となる商品や企業へのロイヤリティが向上し、それがビジネス(あるいはそれに準ずる活動)に具体的に貢献するものでなくてはならない。そう設計すべきものだ。

 そのためには、現存する「空気」を読み解き、あらたな「空気」の醸成につなげることが重要だ。日本という国をひとつの「商品」としてとらえると、そうした発想で、「kawaiiブーム」で起こったようなことを、もっともっと世界に向けて仕掛けていくべきだと思う。

 ごく控えめに言って、日本という国はPRが不得手である。とくに震災後は、国としての情報発信や危機管理もふくめて、その弱さが露呈した。

 レディーガガが来日した際、ワイドショーやニュースを始めとしたマスコミでは、「日本のPRに一役買ってくれてありがたい」という趣旨のコメントに終始していた印象がある。

 しかし、本当に世界でロイヤリティをあげたのはレディーガガのほうだ。あのタイミングで来日すること自体、そしてそれが世界中に報道されることで、ガガは自らのロイヤリティをさらに強固なものとしている。

 日本はもっと、したたかに空気を読み、戦略的にPRをしかけるというケイパビリティを向上させられるはずだ。

 なでしこジャパンの快挙は、そんな示唆にも富んでいたように思う。

◇ライタプロフィール
本田哲也(ほんだてつや)
1970年生まれ。ブルーカレント・ジャパン代表取締役。戦略PRプランナー。米フライシュマンヒラード上級副社長兼パートナー。セガを経て、1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマンヒラード日本法人に入社。2006年にブルーカレントを設立、代表に就任。国内外の大手メーカーを中心に、戦略PRの実績多数。著書に「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「戦略PR」(アスキーメディアワークス)など。2011年2月に「新版 戦略PR」(アスキーメディアワークス)を上梓。

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