リコー、PENTAX買収でコンシューマー事業確立を狙う--2年前から話し合い

 リコーとHOYAは7月1日、リコーによるHOYAのPENTAXイメージング・システム事業の買収について合意し、「株式譲渡契約書」を締結したと発表。これを受けて譲渡に関する説明会を開催した。

  • PENTAXブランドの棲み分け

 今後は、HOYAが吸収分割によって新会社を設立し、10月1日をめどにリコーに当該会社の株式を譲渡する。買収金額は決定しておらず、今後も公表する予定はないという。3年後をめどに事業売上げ1000億円を目指すとしている。

 今回リコーは、HOYAのイメージング・システム事業のみを引き継ぐ。それ以外の内視鏡、人工骨などのライフケア事業やデジタルカメラ用のモジュール(DCM事業)、音声合成ソフトウェアといった事業はHOYAが引き続き展開し、両者ともにPENTAXブランドを使用することになる。

買収目的は「コンシューマー事業の確立」

 リコー 代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏は、「同じブランドを異なる事業領域で使用する。ユニークだがそういうこと。カメラ事業にお嫁にきていただいた、親戚という関係。両者互いの強みを認識して協業していきたい」と語った。

  • リコーの成長戦略

 リコーの買収目的は、カメラ事業の拡大のみらず「コンシューマー事業の確立」にあるという。ワークスタイルやライフスタイルなど、今後のビジネスを取り巻く環境への変化を見据えたものだ。

 「オフィスとホームの垣根が取り払われ、さまざまな商品が変化していくだろう。リコーにとってコンシューマー事業は長年の課題。今後を考えると避けて通れないと認識している。一方で、カメラの未来はまだまだ成長すると信じている。一番やるべき最初のステップは、カメラ事業の強化からやっていくのがいいだろう」(近藤氏)とした。

 カメラ事業はリコーの中に会社を取り込まず、新しい会社として運営していくという。「そこにリコーのカメラ事業を統合し、カメラだけではなくて、ネットワークの新しいアプライアンス事業も入れていくことを考えている」(近藤氏)と説明した。

 今後は、デジタルカメラだけでなく、ビデオ会議システム、タブレット端末、ネットワークアプライアンス端末など、コンシューマーにフォーカスした幅広い製品やサービスを提供していく考えだ。

 なお、カメラ事業については互いのラインアップを比較し、「あまり競合しない領域」と話す。「まだしっかりと考えて戦略を決めたわけではないが、両者とも自社のブランドにこだわりをもっている。クロスはしないが、どうしていくかは今後検討する」(近藤氏)と説明するに留め、明言は避けた。

  • デジタルカメラ市場動向

  • PENTAXイメージングシステム事業部の主要製品

  • リコーのデジタルカメラ製品

買収は「結婚するのと同じ『タイミング』」

 HOYA 代表執行役最高経営責任者の鈴木洋氏は、「HOYAとペンタックスが統合して実質3年半。それなりに苦労もしたが結果的にしっかりした事業はできたと思っている。1つの区切りがついたので、リコーにバトンタッチをするという決断をした。この業界再編は続いていき、今後も再編すべき事業だろうと思っている。その一つの先駆けだ」と語った。

 さらに「今回の話がまとまって嬉しいのは、リコーはカメラを真剣に捉えていること。ペンタックスは長い歴史があり一定の強烈なファンがいる。そのカメラ事業をしっかりと受け継いでいっていただける。大事なものとして受け止めてもらえると感じたから、バトンタッチする決断に至った。ある意味ホッとしているのも本心」と語った。

 この買収は2年前から始まっていたという。「どちらからともなく、鈴木さんと会いたいと申し上げて、カメラ事業について未来はどうなんだ、と話した」と近藤氏は明かした。

 なぜこのタイミングで買収に至ったのかについて、「結婚するのと同じだと思う。双方の状況がよいタイミングでないと、至らない。しっかりとHOYAの中でペンタックスの事業が利益を出すところまできている。今回ミラーレスの一眼がでるが、そういうタイミングで、持参金をつけて出してもらえるのはありがたい」(近藤氏)とし、6月に発表したばかりの一眼カメラ「PENTAX Q」をはじめ、中判カメラ、一眼レフのラインアップ、すでにリストラが済んでいることなどについて高い評価を示した。

リコー 代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏(左)とHOYA 代表執行役最高経営責任者の鈴木洋氏(右) リコー 代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏(左)とHOYA 代表執行役最高経営責任者の鈴木洋氏(右)

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