インターネット上では、物理的な距離にとらわれずに、さまざまな国や地域、そして異なる言語のサイトを訪れることができる。実際にGoogleでは、複数言語が利用されている国について、それぞれの言語での検索オプションを用意している。
たとえばGoogleシンガポールでは、英語、簡体字、マレー語、タミル語での検索が用意されている。言語によって検索結果は異なってくるが、言語だけが検索結果を分ける要因ではなく、地域によっても検索結果は異なってくる。それが特に顕著なのが、台湾と香港の2つの地域である。
台湾と香港はともに中華圏の中で繁体字を利用する地域であり、かつ双方の国で最もメジャーな検索エンジンはYahoo!である。同じ言語、同じ検索エンジンを利用しているものの、台湾と香港のYahoo!ではその地域のサイトが検索結果に表示されるよう、Yahoo!台湾では「台灣網頁優先」(台湾サイト優先)、Yahoo!香港では「香港網頁優先」(香港サイト優先)と設定されている。
ここで気になるのが、Yahoo!台湾とYahoo!香港がどのようにサイトの地域性を認識しているかという点である。
まず、基本的に多くのサイトにとって最も基本的な地域情報は、インターネットの住所録とも呼ばれるIPアドレスで、このIPアドレスを文字列にしたものがドメインとなる。たとえば、日本のサイトであればドメインが<.co.jp>となっている。そして、実際Yahoo!香港で上位表示されるサイトのうちほとんどが<.hk>をドメイン、またはサブドメインとしている。一方で、Yahoo!台湾で上位表示されているサイトの多くは<.tw>をドメインとしている。
しかし、この結果を受けて検索エンジンがドメイン情報のみでサイトの地域性を判断していると考えるのは早計である。なぜならば、ドメインだけで地域を判断した場合、地域や国を明示しないジェネリックトップレベルドメインを有するサイトの地域性を判断できないためである。実際にYahoo!台湾、Yahoo!香港で上位表示されるサイトの幾つかはドメインが<.com>で、URLの他の部分にも地域情報が含まれていない。
続いて、サイトの地域性を判断する要因として考えられるのはサーバの所在である。実際にYahoo!台湾とYahoo!香港で「旅遊」(旅行)と検索した場合、Yahoo!台湾の上位10サイトのうち、8サイトが台湾にサーバを保有している。一方、Yahoo!香港の検索結果に表示されるサイトのうち、8サイトが香港、ないし中国にサーバを保有しており、サーバの位置情報とサイトの地域性には関連性が伺える。また、ジェネリックドメインのサイトであっても、サーバの位置情報から対象地域を把握することが可能となる。
しかし、引き続き1つ疑問点が残っている。ドメインで地域性が判断されず、かつサーバを米国のような第3国に設置している繁体字サイトをYahoo!台湾とYahoo!香港はどのように区別しているのであろうか。
考えられるのは、外部からの評価である。つまり、台湾のサイトからリンクされているサイトは台湾に関連するサイト、香港のサイトからリンクされているサイトは香港に関連しているサイトという地域性の認識方法である。
もちろん、現地からの被リンクがサイトの地域性を決定する唯一の項目ではないにしろ、サイトの言語やドメイン、サーバ位置情報だけではサイトの対象地域を完全に把握できない点を考えると、外部からのリンクが地域性を判断する1つの重要な要素と考えるのが自然であろう。
日本という島国の中では、日本語サイト=日本を対象としたサイトであるためにサイトの地域性を意識することはないが、Yahoo!台湾とYahoo!香港の例からは言語だけが対象地域を判別する唯一の要素でないことがわかる。海外でのウェブ展開の際には、サイトの言語はもちろんであるが、そのほかにドメイン、そしてサーバ位置に加えて、現地サイトから支持される、すなわち現地サイトからの被リンク獲得を意識する必要がある。
1998年6月設立。1999年、日本国内でいち早くSEOを事業化。検索エンジンマーケティング(SEM)の認知向上と市場の拡大に尽力し、上場企業を中心に多くの企業のマーケティング戦略を支援する。PCおよびモバイルのSEM支援で蓄積したナレッジを背景に、多言語でのSEMサービスへと展開。SEMを自社運用する企業向けのサービスも開始。日系企業の海外マーケティング支援も行うなど活動の幅を広げている。2005年11月東証マザーズ上場。絶えず変化する検索エンジンマーケティング動向を読み解き、SEOおよびSEMに関する動向を解説。著書「Search Engine Optimization 非常識なSEOの常識」
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