まずシリコンバレーでバズを作れ--アレン・マイナー氏が日本のベンチャーに望むこと - (page 2)

岩本有平 (編集部)2011年06月21日 11時00分

Miner氏:たとえば米国でSOX法が導入された際、IPOの敷居が高くなり、その結果ベンチャー投資も縮小しました。同じく日本でJ-SOX法が導入された際は、リーマンショックの影響も相まってベンチャー投資は非常に厳しい状況となりました。しかし米国でも景気は回復してきました。日本もいずれは戻るでしょう。

 一方でM&Aによるイグジットについては、悲しい状況です。日本で成功したITベンチャーが海外展開のために海外の会社をM&Aする動きはあります。しかし商品ラインアップ拡大のために国内ベンチャーを買うというのは非常に少ない。

Allen Miner氏

 ですが、イグジットというのはあくまで投資家の望みです。起業家はあまり意識せず、グローバルな意識を持ってもらいたいと考えています。いい商品、手厚いサポート、世界市場への展開を進めることをまずは考えて欲しいと思います。

--3月に東日本大震災にが起こりました。この震災はサンブリッジが関わるベンチャーに影響を与えましたか。

Miner氏:ソーシャルアントレプレナーたちは「こういうときこそ自分たちの出番だ」と語っています。またユニクロの柳井(正氏)さん、ソフトバンクの孫(正義氏)さんたち、起業家が寄付をするという話は今まで聞いたことはありませんでした。米国にある私の財団でも、募金額で集めた額と同額を寄付する、というマッチングプロジェクトを行いました。

 米国では「成功した人間は利益を社会に還元する」というのが起業家のサイクルの最終点です。ベンチャー経営者のあるべき姿がこの震災以降に見えてきたのではないでしょうか。

--サンブリッジで、今後展開しようとしている事業について教えて欲ください。

Miner氏:先ほどもお話ししましたが、まずクラウド分野で米国から面白い会社を日本に持ってきます。そして次に、(Y Combinatorのように)今までとは違う投資をしていきます。まだ細かい話については議論が必要ですが、初期段階からシリコンバレーに出ることを考えていきます。

 我々はこのような発想、そしてその実現の場を「グローバルベンチャーハビタット」と言っています。現在は東京、大阪、シリコンバレーに拠点を置いていますが、今後はいろいろな国、地域に参入するためのパートナー作りや場所作りに取り組んでいきます。

 起業家や投資家が集まり、コラボレーションを起こしたり、資金調達を行ったり。そういったコミュニティがつながっていくことで、面白い投資機会も増えます。今まではインキュベーションと投資を事業として分けてきましたが、これらを分けずに考えていきたいと思っています。

 また、Salesforce.comには、「1/1/1モデル」というものがあります。これは就業時間の1%、株式の1%、製品の1%を使って社会貢献をするプログラムです。こういったプログラムに興味のある起業家は少なくありませんが、それを創業期からやるためには、事業部門とは別の組織を用意する必要があります。そこについては、グローバルベンチャーハビタットと外部の方々で提供できるような仕組みを作っていきたいと思います。

 さらに、ベンチャー支援を10年やってきた中で、宣伝・マーケティングの部分が弱い会社が多いことは分かっています。我々はこれに関しても支援をしていく予定です。いい顧客とのいい関係、我々は「カスタマーエクイティ」と呼んでますが、これを深めていくことで得られるプロフィットやメリットが重要になってくると考えています。

 米国のパン屋の宣伝文句で「Bake Freash Daily(毎日パンを焼いています)」という言葉があります。今やウェブもデイリーでリニューアルするような世界になっていますね。これは、ソーシャルゲームを手がけるZyngaの成功の秘訣であったりします。

 こういう発想をいろいろな企業が取り入れるべきだと考えています。ウェブサイト上でのユーザーの目線を追う「アイトラッキング」、クリック内容の分析など、ウェブマーケティング向けのポイントソリューションを組み合わせてウェブを改善していくことで、カスタマーとの深い関係を作ることも重要になると思います。

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