インタラクティブもストーリーで動かそう--政府広報「復興アクションキャンペーン」のストーリー

 3月11日の東日本大震災を境にコミュニケーションの手法は大きく変わりつつあります。ウェブにおけるコミュニケーションでも、生活者が共感するようなストーリーづくりがますます必要になってくるでしょう。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 政府の仕事も例外ではありません。仮に、一方的でありきたりなメッセージを流すだけでは、誰の心も動きません。より多くの生活者の共感を呼ぶような仕組みづくりが大切になってくるのです。

 4月28日よりスタートした、政府広報「復興アクションキャンペーン」では、生活者の共感を呼ぶようなストーリーを作ろうとしています。このキャンペーンは、東北を中心とする大震災の被災地を応援すること目的に企画されたもの。

 日本全国の生活者に「普段の暮らしの中で、今できることを無理せずやる」取り組みを「復興アクション」と呼び、参加を呼びかけ、その活動の輪を広げていくことを目指しています。

 具体的な「復興アクション」として、

  1. 被災地のために、デマや風評に惑わされムダな買い占めを控える
  2. ショッピング、旅行、外食などで過度な自粛はやめ、きちんと暮らしを楽しむことで日本の元気につなげる
  3. 家電を省エネ型に変えるなどして、みんなの力でこの夏に予測されている電力不足を乗り切る

 の3つの行動の推進を提示しています。

 しかし、従来の政府広報のように、一方的なメッセージを送るだけでなく、一般の生活者が幅広く参加できる仕組みになっていることが大きな特徴です。具体的には、生活者それぞれが自分で考えた「復興アクション」を書き込んでTwitterでつぶやける仕組みを作っていることが挙げられます。

 また被災地を応援するための応援団の旗をイメージしたというキャンプペーンのロゴマークを、いろいろなサイズでダウンロードするページも用意されていることも、参加のハードルを低くしています。

 参加しようと思う会社、店、個人は、このページから勝手に印刷して、各自のできるアクションを書き込み、ポスター、POP、ステッカー、名刺など思い思いの形で使用できるのです。

 例として挙げられているアクションは、「温泉旅行で応援しよう」「家族で外食して応援しよう」「野菜サラダで応援しよう」「スポーツ観戦で応援しよう」「日本酒で応援しよう」など、各自が日常生活でできるごく簡単なものです。

 キャンペーンには小売関係団体、観光団体、生協や消費者団体他、個々の会社も参加を表明していて、その数はどんどん増えていっています。このキャンペーンが今後どれだけ広がっていくかは、まだ未知数です。

 しかしながら、政府広報でこのように、簡単に参加できるインタラクティブなストーリーづくりを試みていることは、画期的と言えるでしょう。それだけ時代の空気は変わっているのです。あなたの会社のウェブコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタプロフィール
 川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)

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