音楽やウェブの一大イベント「South by Southwest」の魅力とは

Robert Laing(株式会社myGengo 代表取締役)2011年05月10日 17時39分

 South by Southwest(SXSW)とは、映画、音楽、インタラクティブ(ウェブ)がセットになった巨大イベントである。年に1度のこのイベントは、毎年3月に米国テキサス州のオースティンで行われる。

 オースティンは静岡県とほぼ同じ大きさの町だが、SXSWが行われている最中は町全体がこのイベントに占領されたかのように感じる。米国中(そして世界中)から人々が集まり、ウェブ業界では1年で最大のイベントと言われている。個人的にはもっとたくさんの日本企業、開発者、そしてジャーナリストが参加するべきだと思う。そんなイベントの魅力についてここで解説する。

 SXSWが大多数の日本のイベントと異なる最も大きな点は、イベントがあまりに巨大なため、もはや「中心」がないということ。町の片側にあるヒルトンホテルでパネルに参加したかと思えば、次は川を越えてハイアットへ行き、最終的には5番通りのバーで飲んでいる。ただ、どう頑張ってもすべてを観ることはできない。やることがありすぎて、会う人が多すぎて、無料ドリンクも溢れている。

  • 数ある会場内にはブースも多く設置されていた

  • パネルディスカッション「Japanese Mobile Leaders Forum」の様子

  • ロボットの展示もあった

 SXSWに参加するベストな方法は、パネルを引き受けること(飛行機代を出してもらえるから)。私はHootsuiteのRyan Holmes氏から、彼の参加するパネル「Big in Japan: Outreaching to a Unique Market」に招待された。彼と私のほかには、デジタルガレージの枝洋樹氏やブロガーでGoogleの山崎富美氏がパネリストとして参加し、Steve Mock氏が司会を務めた。

 パネル当日は東北地方太平洋沖地震からわずか2日後であったため、厳かな雰囲気に包まれていたが、日本へのサポートはとても温かいものだった。最初に数分の黙祷を捧げた後、米国人が最も関心を寄せる日本に関するトピックについて話していった。内容は以下の通りだ。

どうしてFacebookは日本で人気がないのか

 パネリストからは、日本ではオンライン上で実名を使うことに抵抗があるからという意見が多かった。しかし、(映画「ソーシャルネットワーク」の影響もあり、)変化も見られている。最も大きな理由は、Facebookは日本でのプロモーション活動にそこまで力をいれていない、ということが言えるだろう。

日本人に有効なプロモーション戦略とは

 聴衆の多くは、キャラクターを用いるという事例に驚いていた。ただ、パネリストの主なアドバイスは現地でパートナーを見つけること。例えば、Twitterとデジタルガレージとのパートナーシップのように。マーケティングに日本らしさを取り入れることが最も重要だ。

どのように日本で第一歩を踏み出すべきか

 私のアドバイスは「反復アプローチ」で積極的にサポートしてくれる日本人ユーザーを見つけること。もしまだ確信の持てる商品やサービスが完成していないのであれば、新しい市場に参入する理由はない。例えばHootsuiteのような会社は、Hootsuiteに惚れ込んだ日本人ユーザーの助けを借りて、日本に合わせたサービスの改善を行い、成長を続ける日本のユーザーベースとコミュニケーションをとっている。

 パネルの内容はSXSWのサイトで視聴できる。

 SXSWに行く一番の目的は、出会いだ。一緒に仕事ができる人、助け合える人、投資をしてくれる人、アドバイスをくれる人、そして、ひらめきをくれる人。SXSWですべきことを重要度の順で挙げると、まずもっとも重要なのがパーティーへ行くことだ。次にロビーを徘徊すること、パネルへ行くというのはその次と言ってもいい。

 パネルを見るだけで時間を使い果たしてはいけない。SXSWの目的は、あくまで人に出会うことだ。参加者の熱意、そこで起こるイベント、出会いの機会、そして情報の量や数々のチャンスという点においてSXSWに勝るイベントはないだろう。SXSWで取引、商談をまとめられると考えるべきではない(ただし、実際に起こることはある)が、人に出会い、興味を持ってもらうための場として利用しよう。

 少し不思議に聞こえるかもしれないが、海外のイベントは日本のインターネット企業の幹部に出会うベストな場所でもある。私が過去に参加した海外のイベントすべてに、ディー・エヌ・エーやミクシィ、グリーなどから5、6人の日本人リーダーが参加していた。海外のイベントで彼らに自己紹介をして話をする時間をもらうのは、日本にいる時よりもずっと容易だ。

SXSWでのプロモーション方法

 東京ビッグサイトなどで行われる日本のイベントのほとんどは、プロモーションのためにブースを持ち、興味のある人が向こうから来てくれることを前提とする。SXSWでは、これは100%間違ったアプローチだ。何か特別なことをしなければならない。企業のプロモーション活動例を下記にあげてみる。

  • SquareSpace(ホームページ作成ソフトウェア)
    SXSW期間中、一週間ずっとフードトラックにて無料でハンバーガーを提供。フードトラック横の巨大バナーで自らのサービスについて宣伝(写真)。
  • Sonos(ワイヤレススピーカー)
    バックパックを背負ったスタッフが歩き回り、参加者が自分のiPhoneやAndroid端末を無線接続して、その音質を試していた。
  • Foodspotting(フード写真シェアアプリ)
    駐車場全体を貸し切り、フードトラックを6台も集めたFoodspottingのプロモーションは、特に目を引くものだった。
  • アップル
    iPad 2のポップアップストアを設置。iPad 2はSXSW初日に発売された。

 SXSWで細々とプロモーション活動をすることに意味はない。時間か資金、もしくは両方を費やす必要がある。そういった資源があるならば、ネット上で最もスマートで顔が広く、影響力が大きいユーザーが集まるこのイベントでそれを費やすべきだ。

 インスピレーションにあふれるイベントSXSWは、毎年成長し続けている。もっと多くの日本企業や日本人に参加して欲しい。パネルに参加するのもよし、個人としてただ見学するのもよし。どんな人にとっても価値があり、実りのある経験になるのではないだろうか。まったく違った形のマーケティング方法や新しい企画など、視野を大きく広げることができる。

myGengo代表取締役Robert Laing

イギリス人の両親を持つオーストラリア生まれ。ベルギーや香港など、4カ国を転々と育つ。オンライン広告やブランディングを専門とするイギリスの大手広告代理店で、デザインだけでなく、デザインを実現する技術の向上にも力を入れ経験を積む。2006年、イギリスでデザイン会社Moresidedをスタートさせ、Last.fmやGuardian新聞社などを顧客に活動。2007年に東京へ移住後、デザインプロジェクトと平行してmyGengoを立案、2009年の設立に至る。

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