logo

スマートフォン市場は期待大だが産業としてまだ未熟--D2C本格参入の狙い

別井貴志 (編集部)2011年04月27日 08時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 メディアレップやモバイルソリューション、マーケティングなどを手がけるディーツー コミュニケーションズ(D2C)は、3月から本格的にスマートフォン市場への参入を表明し、新たな組織も立ち上げた。

 その中心人物となる事業開発本部本部長の山口哲也氏に、今後の戦略などについて聞いた。また、山口氏は5月20日に開催される「クラウドデバイス時代の先端マーケティング合同セミナー」に登場するが、この狙いなども併せて聞いた。

--スマートフォンやタブレット市場についてどう見ていますか。

 昨年の夏頃、スマートフォンにどのように対応していこうかと考え始め、その時予想していたスピード感よりもずいぶん速い成長だと思っています。当初は今年の夏ぐらいをめどに何らかの答えを出せばいいのではないかと話していましたが、今年の1、2月には新しい組織を立ち上げてスマートフォンを全社的に検討していくプロジェクトを進めないと、立ちゆかなくなると考えました。驚くほどのスピードで動いています。

--3月に新たな組織を作りましたね。

説明 D2C事業開発本部本部長の山口哲也氏は2010年9月頃からスマートフォン市場を本格研究

 スマートフォン関連事業を推進していく組織「Smart Phone Vector(スマートフォンベクター)」を3月1日付けで設置しました。現在全社員数は280名程度ですが、現在この組織には40名ぐらい参加しており、数カ月以内には60名規模に拡大する予定です。

 専門の独立部署ではなく、全社を横断する形の組織なので、専任担当者は置いていません。D2Cの営業部門やメディア部門、ソリューション部門など複数の事業部のメンバーで構成され、スマートフォンに関する情報はすべて各部門から集まる仕組みになっています。各種タスクフォースやワーキンググループを組織し、既存事業のスマートフォン対応やスマートフォン関連サービスの開発、スマートフォン向けコンテンツ・アプリ制作業務、各種アライアンスの検討などを推進していきます。

--ベクターが組織されるまでに準備段階があったようですが。

 その準備は、プロジェクトチーム「スマートフォン・ラボ」というかたちで、スマートフォン関連ビジネスの検証や、市場調査などを2010年9月頃から約7名で進めてきました。

 D2Cはもともとモバイル市場をどう作っていくかに焦点を当ててきました。僕たちがスマートフォンのアプリを作って儲けようというような発想ではなくて、スマートフォンというデバイスの中で、どういうプレーヤーがどう儲けていくのだろうかということを考えてきました。

 そしてベクターでは、たとえば今までのような「iモードで利益を得て、新しいサービスをどんどん矢継ぎ早に提供して、みんなの生活が豊かになっていく」というサイクルをどう作れるか、ということを進めていきます。そのため、ラボでやってきたことというのは、スマートフォン市場で、BtoB、BtoCの中でどういうプレーヤーがどういう場所でビジネスを展開していて、そこはいけるのか、いけないのか、市場性は高いのか低いのか、という点などについて仮説を立てて検討してきました。

--検討してきた中で、どこに市場性があると思いますか。

 年明けぐらいまでの時期は、コンサルティングをしている人ぐらいしかビジネスとして成り立っていなかったと思います。書籍を出しているとか、アプリ作成の講演をしているとか。しかし、アプリを作って儲けているという人はごく一部だし、産業としてはまだまだ未熟かなと。

 とはいえ、ソリューションの分野はここ1、2年にはビジネスとして成り立つだろうなと見ています。モバイルでマーケティングをやっていた方々が、どうすればスマートデバイスに移行できるのか、そして利益を確保できるのかと。PCのプレイヤーたちもスマートフォンに入ってくるので、ソリューションという分野に関してはかなりいろいろなプレーヤーが出てきて、産業として活性化するのではないでしょうか。

--スマートフォンベクターの目標は?

 まだ大目標というのはなく、集約しているところですが、推進している側からすると、足の長さが違うなと感じています。ソリューションは先に述べたとおりですが、僕たちが生業としているメディアというもの、広告というものは成熟していくのに2、3年はかかるだろうと考えています。

 なぜかというと、もともとは儲かる方々がたくさん出てきて、それで、そのサービスを欲しい方々が増えてきて、その方々の幾ばくかの利益が我々にも入ってくるという、このエコシステムが回ってくるまでは時間を要するので、まだ広告事業は難しいだろうと。ここに無理矢理入っていってパイを奪い合うというのは不毛かなと思っています。3年ぐらいかけて、どのようにメディアを育成していけばいいのかというスパンになっていくと思われるので、それぞれで足の長さが違うなと感じています。

 もう1つ、NTTドコモの子会社でもあるので、同社と一緒にスマートフォンにおけるサービスが、たとえばマーケティングツールとして有用かどうかといったことなどを議論しながら作っていく立場にもあります。

--スマートフォンは端末の種類が増加の一途で、サイト表示や課金の仕方もそれぞれ違いますが、事業戦略を考えていくうえで相当なハードルがありそうですが。

 事業者目線で言うと、相当つらいと思います。異なる端末に対してすべてを最適にするような、コンバートするようなツールはたくさん出てくると思いますが、それぞれの端末向けに分析、最適化するコストを考えた場合に、いままで得られた利益が出るのかというと、たぶん難しいのではないでしょうか。さらに、コンテンツ自体も単純な占いなら表示するだけですが、ゲーム性を入れたら端末ごとにまったく動きが異なることもあり得ます。そのそれぞれを確認して対処していくのは、手間もコストもかかります。

--「コンテンツプロバイダーはスマートフォンで儲かる」というのが見えないとなかなか本格参入してこないし、でもそうならないとユーザーもついてこないと。

 そうですね。僕はいまのところは、スマートフォン産業が健全に成長するかどうかというところを見極めるスタンスでいますが、BtoC分野というか、直接消費者と結びつき、料金を徴収するようなモデルをいま柱として作っていこうとしています。

 これはベクターというより、僕のいる事業開発本部というのは、それをやるために同時に新設された部署なんです。スマートフォンだけでなく、フィーチャーフォンも手がけますが。ただし、アプリをちょっと作って儲けちゃいました、というのをしたいわけではなく、スマートフォン環境におけるBtoCビジネスというのは、どうやったらみんなが儲かるようになるのだろうか、ということを検証していくために自らが実際にサービスをやってみるわけです。

 また、そういうサービスを手がけているプレーヤー達を集めたらどうなるかなどを、実業を手がける中で見つけていくために、BtoC事業にも手を付けています。

--具体的には?

 スマートフォンではなくフィーチャーフォンですが、すでに3月30日にゲームをリリースしてます。ソーシャルゲーム「政界コロシアム ~キミが総理だ!~」を、GREEとmobageに提供しています。

 そして、スマートフォンになったときには、より表現がリッチになっていくでしょう。僕はとりわけタレントとか、エンターテインメントに注目しています。エンターテインメントはネットになった瞬間にまったくお金にならなくて、多くの動画も無料で配信されている状況です。やっぱり米国でエンターテインメントの市場規模はものすごく大きくて、日本はデジタルに関してはほとんどない。どうしたら健全化できるのだろうと考えています。コンテンツの提供者が対価をちゃんともらっていれば、市場は活性化するんではないかと。そういったことが作れないかと。

 そこで、タレントがきちんと対価を得られるような仕組みをデジタルの分野でできないか、ということに現在取り組んでいます。もう少しすると、いろいろ具体的に示せると思います。

--なるほど。いずれにせよ、端末が多様化する中でコストに見合うリターンがある、つまり儲かるんだ、ビジネスになるんだ、というサイクルが見えてくれば、産業として活性化していろいろなサービスが登場し、そこに人が集まって価値が生まれてくるわけですね。しかし、マーケティング戦略も含めて、まだまだその域には達していないと。

 どのように多様化した端末にコンテンツなどを届けるか、その入り口のインターフェースをどうするかというのは課題になるんだろうなと思います。みんながいつも同じアプリを立ち上げていればいいけれども、そんなことはないだろうし。そこを誰が取るのか。

 そういう意味では、アプリを作って稼ごうといったセミナーはありますが、まだ、スマートフォンやタブレットにおいてマーケティングが成功してビジネスになっています、という事例やセミナーはほとんどありませんね。だからこそ、5月20日に行われる「クラウドデバイス時代の先端マーケティング合同セミナー」では、どんな活用事例が聴けるのか楽しみにしています。こうした流れの中で、我々としてはこれまで、レップとしてメディアと代理店をつなぐというのが基本でしたが、そうでない分野をスマートフォンという切り口の中でいかにビジネスを検証していくかということを模索しています。

-PR-企画特集