テレビから頻繁に流れる「緊急地震速報」の仕組み--デジタル放送ならではの工夫とは

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 「関東地方で強い揺れを感じる恐れがあります。まずは身の安全を確保してください」――3月11日の東日本大震災発生以降、こうした緊急地震速報をテレビで目にした方は多いはず。まずは警戒音とともに赤で白文字を囲った字幕スーパーが表示され、少し遅れて地域を示すスーパーとアナウンサーから前述のような注意喚起コメントが出される。不思議な時間感覚を覚えるこのデジタル放送サービス、一体どのような仕組みで行われているのか。NHKに聞いた。

 地震予知を担当するのは気象庁。各地に配置した震度計がP波(地震初期に起こる縦揺れの微小震動)を検知した段階で放送局ほか関連機関に通知し、S波(その後に起こる横波の大きな揺れ)到達前に地点や震度を予測するという仕組みで、2007年より一般向けにも導入されている。

 気象庁からの情報を受けた放送局側は、デジタル放送波に緊急信号を乗せて送信する。本線映像や音声よりも伝送速度の速い信号で送るため、受信したテレビ端末側は地図付きスーパーやアナウンサーコメントよりも先に警戒音と緊急字幕を表示できる。

 このような仕組みをとった目的は、まずデジタル放送ならではの「時間的ズレ」の解消。デジタルとアナログのテレビを並べてみるとわかりやすいが、送受信に信号処理をともなうデジタル放送の場合、アナログ放送と比較して2~5秒程度表示が遅い。つまり気象庁から緊急地震速報が届いても、本線映像、音声と同じタイミングで出していては遅れが生じてしまうのだ。

 さらにNHKの場合、全国が同一事業体(民放はネットワーク局であっても別会社)という事情がある。東京で受けた気象庁からの情報を地域局に向けて発信することで最大で2.5秒程度の時間的ロスが生じてしまう。こうした課題を解消し、1秒でも早く視聴者に危険を知らせようと導入されたのが現在のシステムというわけだ。

 気象庁の緊急地震速報は、震度5弱以上で発信する規定であるが、震災後には誤報もあり、その問題点も指摘された。しかしNHKにこれまで寄せられた視聴者の意見は「家のチャイムと似ていてまぎらわしい」「警戒音が甲高い」「ニュース速報と区別がつかない」といった内容がほとんどで、システム自体に関する厳しい指摘は受けていないそうだ。

 また「アナログ放送同等のスピードを求めるのであればアナログ放送のままで良いのでは」というこちらからの指摘については「デジタル放送ではアプリケーションの一部として対応可能。緊急地震速報という技術を放送サービスに活かす意味では、やはりデジタル放送が適している」(編成局専任局長の春口篤氏)と説明した。

 なお、テレビ端末によっては地上波放送以外にチューニングした際(録画機、ゲーム機などの外部接続機器使用中)にも警戒音だけが鳴る、というケースが確認されている。これについては「基本的に、NHKにあわせていなければNHKの緊急地震速報は受信できない(民放各局も同様のサービスを実施)はず。外部接続機器使用中に音が鳴るのだとしたら、それは端末側の仕様では」とのこと。ある大手家電メーカーに確認したところ「端末モデルによっては、外部入力中にも一部、地上波テレビのチューニング機能を残しているケースが確認されているが、詳しいことは調査中」という回答を得た。

 緊急地震速報の、そしてデジタル放送の価値を高めるという意味で期待されるのがワンセグへの対応だが、同じく期待されながら端末実装が進んでいないウェイクアップ機能(緊急時、特定の放送信号によってワンセグを強制的に起動して災害発生などを知らせる仕組み)とともに採用が見送られている状況。「津波の発生など、外出中の方に危険を知らせる有効な手段であり、(通信と比べ)安定性も高い」(春口氏)と評価するが、バッテリや携帯電話端末基本仕様の課題などもあり、実現に向けたハードルは高い。

 字幕スーパーでのアナウンスは2010年8月から開始しており、3月11日以前の実施は3度(2010年9月、10月、12月)と決して多くはなかった。しかし、大震災後に頻発した気象庁からの情報伝達にも問題なく対応した模様。「数秒間でも早く地震発生を知ることは、生命の安全を守る上で有効。まずは放送サービスのひとつとして視聴者、国民の皆様に認識していただければ」(春口氏)。今後も正しい理解のもと、情報ツールとして役立ててもらえるよう呼びかけていく方針だ。

緊急地震速報のイメージ 緊急地震速報のイメージ
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