ウェブにおけるコミュニケーションには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、生活者の感情を動かすエピソードや仕組みを指しま す。
エスエス製薬の胃腸薬ガストールの「胃痛オブ・ザ・イヤー」キャンペーンには、人間の感情を刺激するストーリーがありました。
胃痛オブ・ザ・イヤーとは、「ガストールが胃痛に効く」という認知率と理解率の向上を目指して組み立てられたキャンペーンで、「2010年の胃が痛くなるような話(=胃痛話)」を広く募集するというものです。
ツイッターを用いて50字以内で投稿した人の中から抽選で1人に、「胃痛オブ・ザ・イヤー」として、胃痛にちなんだ賞金120(イツー)万円と岡田監督直筆メッセージ入り特製Tシャツが贈られます。
特別審査委員長には、2010年に最も大きなプレッシャーと戦った人として、ガストールのCMにも出演している岡田武史・前サッカー日本代表監督が起用されました。
応募は2010年末で締め切られ、現在最終審査中です。プレッシャーやストレスを笑って吹き飛ばす、数多くの応募がツイッターから投稿されました。そのうちのいくつかは、特設サイトで見ることができます。
例えば以下のような投稿です。
「どうも上司に信用されていない」
「この時間までにアイデアを出せと言われるが、許された時間、わずか5分」
「旦那が毎日家に帰ってくること」
「メールを送る。返信がない。メールを送る。返信がない。メールを送る。返信がない。彼女…だよね?」
「仕事の山と期待してるよの一言を、残して上司は早退し、、、」
「家庭の中で、俺だけアウェイ。父なのに」
いずれの投稿にも、岡田武史さんが応援メッセージを贈っていて、それも合わせて読むことができます。
このキャンペーンは多くのブログで取り上げられ、ツイッターからたくさんの胃痛話が投稿されました。では何が受け手の心を動かしたのでしょう。
それは、このキャンペーンに生活者が参加できるストーリーがあるからです。
働いていれば、胃がいたくなるような場面は、何度かあるもの。それをツイッターで手軽に投稿できることで参加する者のハードルを下げました。
もちろんつぶやくだけで120万円がもらえるかも、という賞金も魅力的です。また自分が投稿しなくても、人の胃痛話を読むだけで「あるある」と共感できるものもたくさんあります。結果として、自分に関係あると思ってもらい、多くの生活者が参加したのです。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のウェブコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
◇ライタプロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店で営業局、クリエイティブ局を経て独立。フリーランスのコピーライターとして様々な企業の広告制作に携わる。また、広告の仕事と並行して、舞台脚本、ドラマシナリオ、ゲームソフト企画シナリオ、数多くのストーリーを創作する仕事にかかわる。近著に『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)
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