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ヒットは予見できるのか?

戸口功一(株式会社メディア開発綜研)2011年01月26日 18時13分
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 最近のサードパーティにおけるコンシューマゲームのヒット作品は、ブランドが確立したタイトルの続編モノ、コミックやアニメ、テレビ番組、映画などのゲーム化モノなど、ある程度、知名度のある作品に限られているように見受けられる。

 チャレンジングな作品は、ハードメーカーなど資本力があるゲーム企業に限られており、このことは流動化しないゲームソフト産業の危うさが露呈している状況といえるだろう。

 失敗したくない世代(10代〜30代)がゲーム産業を支えている関係で、チャレンジングなソフトがなかなか売れず、上記のような定番ソフトが乱立する状況となっている。

 これは現在の市場にマッチしているともいえるが、今後のゲーム産業を考えていく上では、好ましくない傾向といえよう。

 市場が先細りの状況下で、資本力の小さな企業が、新しいゲームソフトのトライをしていくためには、何が必要になるのだろうか。

 一般的には、マーケティングコストをかけて自社開発・発売ソフトのコンセプト、ストーリー、キャラクター、操作性など内容面や制作工程などの制作サイド(内容面)に関してのチェック、そして広報、宣伝活動、流通に関する対策等、営業面のチェックなど、総点検(検証)を実施する。

 また何が弱かったのか、他社作品との比較といったことで、データ化できるものについては数値で確認することが重要であるといえる。

 ゲームソフトほか、映画などコンテンツ関連業界では、目利きと呼ばれる個人の感性に頼る方法が重要視されている。

 しかし、目利きの育成が最重要課題のように業界ではいわれているが、本当にそうだろうか。そもそもコンテンツは水物であり、データで当たりはずれがわかれば苦労はいらない。

 今活躍している目利きは、入社時からコンテンツに係る部署を渡り歩き、企画からヒットまで小さな成功体験でもいいので、一から経験した人物である。目利きの必要性は理解しているが、育成できるものではないように思う。

 日本のコンテンツ産業の問題はガラパゴス化にある。ガラパゴス化はケータイ固有の表現ではない。そもそも国内だけをマーケットとしてリクープモデルを構築しているところに問題がある。

 海外展開はリクープ後、引き合いがあったところへ、といった「二の次」ビジネスとなっている。

 海外展開は「二の次」なので、作品の資金集めを自社もしくは仲間内だけで行う習慣が国内のコンテンツ企業には根付いている。外部から資金集めをする必要がないということは、投資家へエビデンスを提示する必要も、その後の検証データも必要性が極めて低いといった循環に帰結している。

 その結果、日本のコンテンツファンドは成立しにくい環境になっている。海外では建前でも投資家を納得させるための評価システムが存在し、ユーザー評価を加えたマーケットエビデンスを提示する。我が国にはそれが欠如しているのではないだろうか。

 いずれにしても今後の日本のコンテンツ産業が大きく飛躍するには、コンテンツ業界以外から資金調達できるためのエビデンスデータの集約が不可欠ではないだろうか。

 その方向性の一つとして、基本データだけでも共有することが重要であり、各社が保有するデータリソースを統合することにより、評価システムが構築できるかもしれない。

 *今回のコラムは筆者が「ビジネスファミ通」に寄稿したものを抜粋。
http://www.famitsu.com/biz/

◇ライタプロフィール
 戸口功一(とぐち こういち)
 1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。

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