「ソーシャルは未知だから楽しい」--ミクシィCTOが語るエンジニアという働き方

鳴海淳義(編集部)2010年11月22日 11時00分

 IT分野の人材をめぐる企画はいよいよ、実際に人を欲する企業へのインタビューだ。今回応じたのはミクシィのCTO。そこで出たのはやはり「優れた人材が欲しい、見つけたい」との声だった。その求める人物像とは?

 カナダで生まれ、10代まで米国と日本を半々くらいで過ごし、米国の大学を卒業。シリコンバレーで初めて就職して以来、15年以上の間、一貫してウェブ開発に携わってきた。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「mixi」を運営するミクシィの最高技術責任者(CTO)、佐藤ニール氏が同社に入社したのは2007年のことだ。リクルート、ヤフー、米Yahooを経て、大規模なウェブに関わりたいと日本のSNS事業者を選んだ。

佐藤ニール氏 ミクシィ 最高技術責任者 佐藤ニール氏

 「当時、SNSが非常に大きなトラフィックを生んでいた。しかもそれを開発、運用しているメンバーはごく少数と聞いて、ますます興味を持った。正直、SNSにどんなポテンシャルがあるのかはその時点ではよくわかっていなかったが、ユーザー数が増えていくなか、おもしろい試みに取り組めると思い参画した」

 入社から3年が経ったいま、ニール氏は「仕事が楽しくてしょうがない」と話す。mixiは2009年夏からプラットフォーム戦略を推進。サードパーティの企業あるいは個人開発者に、2000万人を超えるmixiユーザーに対してアプリケーションを提供する機会を設けた。さらに2010年からはmixi内のユーザー同士のリアルな人間関係(ソーシャルグラフ)を軸にウェブの世界そのものを再定義する取り組みを進めている。「ソーシャルグラフプロバイダ」という新たな事業者に変貌しつつあるのだ。

 これまではたとえばGoogleなどの検索エンジンがページランクという仕組みでウェブページをランキングしてきた。だがmixiはインターネットユーザーの人間関係をもとにウェブページを結び付けようとしている。その応用分野は各種情報サイトやECサイトにとどまらず、携帯電話やテレビなどのハードウェアにも及ぶと考えられ、非常に関心が高まっている。そうなると自然とエンジニアの働き方も変わってくる。

 「ソーシャルグラフは未知の世界だから楽しい。ソーシャルグラフを中心に考えると、開発者だってコミュニケーションとはそもそも何だろうかと、企画者と一緒に考える時間が増えてくる。これまでは求められる機能をある程度予想しながら開発していたが、ソーシャルに関しては予測が外れやすい。コミュニケーションについてじっくり考えてみると、意外なものが必要だったということがある。あとはこれまでのようにすべてのアプリケーションを社内で提供するのではなく、サードパーティと一緒に提供していくというのは仕組み的にもチャレンジングだ」

 さらにデバイスも多様化してきた。たとえば10年前はPCのブラウザだけを考えていればよかったが、いまは違う。mixiもモバイル版のトラフィックがPC版の倍以上の規模に成長しており、さらにスマートフォン版のユーザーも急増している。「多様化するデバイスへの対応は技術的にも面白いエリア。社内のエンジニアもかなり前からiPhoneやAndroid端末をいじって、デバイスごとのサービスのあるべき姿を追及している」。

 ミクシィの社員数は318人。そのうちエンジニアは最も割合が高く、約3分の1を占める。各サービスごとに部署が分かれており、その中にアプリケーションを開発するエンジニアが配属されている。2008年から新卒採用を本格的に開始しており、毎年15〜30人ほどを採用してきた。今後はエンジニア職を中心とした獲得を目指し、2012年は40〜50人程度の採用を予定しているという。中途では毎年50〜80人を採用しており、職種別ではやはりエンジニアが多い。現状、全体の採用数の半分以上を占めているそうだ。今後もエンジニアを中心により積極的な採用活動を展開する予定で、2011年4月には従業員拡大に備えたオフィス移転を控える。

 スタープレイヤーも集まっている。OpenSocialの分野で有名な田中洋一郎氏は、ニール氏自ら声をかけたという。OpenSocialの業界でのプレゼンスは抜群で、モバイル版の仕様を策定した際にも、世界中のエンジニアに対して日本から提案をするなど貢献している。現在はミクシィのプラットフォーム化を推進する立場だ。

 田中氏を筆頭に、ミクシィのエンジニアが共通して持っている資質が、「ソーシャルへの深い理解」だ。ソーシャルな関係性によってウェブを結びつけるというこれまでになかった新事業を前にし、どれだけ想像力を働かせ、柔軟な思考ができるかが重要になってくる。

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