Opera Software(Opera)がノルウェーで開催したイベント「Up North Web」で、同社最高技術責任者(CTO)を務めるHåkon Wium Lie氏が講演した。
Lie氏はWorld Wide Web(WWW)発祥の地となった研究機関「CERN」に在籍し、Tim Buners-Lee氏とともに働いた経験を持つ。1990年代前半、Lee氏がURLやHTTP、HTMLなど現在のウェブの基礎となる概念を発明する一方、Lie氏もCSSを提唱し、ウェブの発展に貢献してきた。講演ではHTML5の各機能とウェブの重要性についてあらためて語った。
「HTML4とCSS2が登場した当時、それらは非常に先進的だった。だが世界はさらに進化し続け、2010年は新しい世代の標準、つまりHTML5とCSS3が注目を集めている。これらの機能を使うことにより、我々はもっと簡単にウェブアプリケーションを作れるようになる。HTML 5はいまやアプリケーション言語である」(Lie氏)
Lie氏はHTML5のいくつかの機能を紹介した。まずはローカルストレージ。ウェブアプリケーションがファイルを保存できるようになり、一時的にオフラインになっても動作するウェブアプリケーションを作れるようになる。次にジオローケーションを利用すると、位置情報を利用するウェブアプリケーションを作れるようになる。Lie氏は、Operaで動作するウェブアプリケーションがユーザーに現在地をシェアするように求め、ユーザーがそれを許可し、地図ページから現在地をクリックして指定するという一連のステップをデモで披露した。
さらにLie氏は、Linuxデスクトップ用のOperaでゲームアプリケーションを起動し、プレイして見せた。「ゲームも基本的なHTML5にいくつかのJavaScriptとCSSが組み合わさってできているウェブアプリケーション。このようなアプリはウェブ上に何千もある。ウェブはまさにアプリケーションプラットフォームだ」と話した。
CSS3のウェブフォントはウェブの見た目を大きく変える技術だ。従来、ウェブで使えるフォントはMicrosoftが策定したものだけだった。「なかなかハイクオリティで良かったが、使われすぎて飽きてきた。もっといろいろなフォントが欲しいし、もっとリッチな表現を使いたい」とLie氏。ウェブフォントを使うと派手なフォントも利用可能になるが、すべて画像ではなくテキストデータなので、選択したり、コピー&ペーストしたり、拡張機能にデータを渡したりできる。
Lie氏は1枚のウェブページを見せた。装飾的なフォントや動画、細かいエフェクトがふんだんに使われていたが、JPG、GIF、PNGなど画像ファイルは一切用いられていない。あらゆるエフェクトがCSSによるものだという。
8月にWired Magazineが「The Web Is Dead」という記事を掲載し、ウェブの時代は終わったのではないかと主張した。記事にはウェブよりもiPhoneアプリや動画などがより消費されているとある。Lie氏は「私もOperaもそれには賛成できない」と反論した。「確かにウェブよりもビデオのトラフィックが増加しているが、ビデオだってウェブの一部だ。ウェブページの中で再生しているし、YouTubeだっていまだにウェブサイトの中にある。Operaはウェブにもっと可能性があると思っている」と述べた。
iPhoneやiPadなどの端末用に作られたネイティブアプリケーションは素晴らしく、収益化の道も開けているとLie氏も評価したが、「ウェブも同じような機会を提供できると信じている。ウェブ上でお金を払ったことがある人は多い。また、これらのガジェットと同じような機能、たとえば位置情報やハードウェアへのアクセス、ネイティブと同などのパフォーマンスなどはウェブにも搭載可能だ。ネイティブアプリは過渡的な間に合わせのソリューションに過ぎない。ウェブアプリこそがファイナルアンサーだ」と訴えた。
Tim Berners-Lee氏は1999年にTimeのインタビューにこう答えたことがある。「HTML4は標準仕様として200年は続くだろう」。Lie氏はこれをアップデートすると宣言し、「私は500年は続くと思っている。これは適当な数字ではない。500年前のヨーロッパの歴史をみればわかる」と述べた。
「Johannes Gutenberg氏は約500年前に活版印刷を発明した。彼の発明はヨーロッパを変え、情報が安価に多くの人に同時に届けられるようになった。この結果、ヨーロッパにルネサンスが起き、情報が流通し、産業革命につながった。印刷の発明はウェブとよく比較されるが、ウェブは印刷がヨーロッパにもたらしたのと同じくらいの影響を世界に与えた。本を扱うのは簡単で、いまや誰でも使い方をよく知っている。ページを開いて、ただ読むだけだ。本は言語を認識しやすいし、フォントも気にいったものがそろっている。同じことはウェブにもいえる。500年後も我々はウェブページについて話しているだろうし、今日書かれたコードも読めているはずだ」(Lie氏)
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