iPhoneやiPadで、30以上の雑誌や新聞を定額で楽しめるサービス「ビューン」。AERA やCanCam、週刊ダイヤモンドなど、知名度の高い書籍を幅広くラインアップしている。iPadの発売を目前に控えていたこともあり、サービスを開始した6月1日にはアクセスが集中し、サービスの一時停止を余儀なくされた。
「サービス開始当初は皆様にご迷惑をおかけしましたが、現在は順調にサービスを提供しています。とにかくまずサービスをはじめてみたことで、アプリビジネスの奥の深さが分かりました」とビューン代表取締役社長の蓮実一隆氏は話す。
その後、Wi-Fiネットワーク経由での利用に限定して、7月6日にiPad向けサービスを、8月17日にiPhone/iPod touch向けサービスを正式に再開した。さらに、10月1日からはソフトバンク携帯電話向けのサービスも開始する。
ビューンは、iPhone版を月額350円で、iPad版を月額450円で提供している。大手出版社のコンテンツを取りそろえているにもかかわらず、なぜこれほど安価にサービスを提供できるのだろうか。蓮実氏は「もっと高くすることもできたが、ビューンでは書籍の販売よりも読者に継続的に利用してもらうことを重視した」と説明する。安価に提供することで長期的に利用してくれる読者の獲得を目的としているという。
ビューンのビジネスモデルは、各出版社の主力コンテンツを一カ所に集約して提供し、ユーザーはそのプラットフォーム全体に対して料金を支払うというものだ。提供するコンテンツがどれだけ読まれたかなど、ビューンへの貢献度によって支払われる金額が変わるレベニューシェアモデルを採用しており、情報の提供量は各社が自由に決められる。例えば、最初の数ページしか読めない雑誌もあれば、発売日にすべてのページを閲覧できる雑誌もある。また、バックナンバーを読める期間なども各社が設定できる。
「出版社によって得意分野や業績はさまざまで、電子書籍へ取り組む姿勢も異なります。ビューンではプラットフォームとしての場を提供するだけで、情報の見せ方などは各社にお任せしています。また、私たちがサービス運営を通して培ったノウハウなどは参画企業にお返ししています。そのノウハウを他のサービスやビジネスにも活用していただければと考えています」
7月6日のサービス再開から2カ月以上が経過したが、ユーザーのビューンへの評価は二極化しているという。現在は万人向けのコンテンツが中心なことから、好みが合う人とそうでない人で評価が大きく分かれるためだ。
今後は、ビューンというプラットフォームの中で、スポーツや音楽などジャンル別のコンテンツや、性別、年代など属性別のコンテンツも提供していく。また、ただ書籍をデジタル化するだけでなく、電子書籍ならではの表現方法も模索したいと、蓮実氏は言う。
「ビューンは、1つのプラットフォームで多様なコンテンツを楽しめるのが特長です。普段はなかなか手に取らないような雑誌も気軽に読める(例えば、お父さんがCanCamを読むなど)ので、幅広い読者の声を集められる、いわば実験場としての側面も持っています。紙の雑誌が持っている価値をさらに高めるにはどうすればいいか、出版社の皆様にさまざまな表現を試していただける場になればいいと思います」
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