インターネットが普及して、テレビを見る人が減ったと言われる。確かに、ワールドカップのような世界的に注目される大会の放送以外は、10年前と比べて軒並み視聴率が下がっている。しかし、本当に人々は「テレビ」を見ていないのか?
正確には「テレビ」は見ていないかもしれない。しかし、「番組」を見る人はそれほど減っていないのではないだろうか。見たい番組は、録画してビデオやデジタルレコーダーで見たり、パソコンでインターネット配信を見たり、DVDで見たり、視聴スタイルは多様化している。視聴者のニーズは日々変化しているのだ。このニーズに応えられなければ、誰も番組をみなくなる。当然のことだ。
テレビ局も、このままで良いわけはないと焦り始め、試行錯誤しながら、一部の番組のオンデマンド配信などを始めて起死回生を図っている。そのような日本のテレビ局に比べて、さまざまな面白い試みをすでに行っているのがアメリカだ。
アメリカのテレビ局やメーカーは、インターネットで番組を配信したり、インターネットをテレビに融合したり、自由な発想でテレビを捉えているという。そのさまざまな試みを詳細に伝えるのが本書だ。アメリカと日本では、テレビ事情そのものが多少異なるかもしれない。しかしまずは現状を知り、取り入れられる方法を積極的に採用する姿勢でなければ、日本のテレビには本当に未来がなくなるのではないか。
本書では、CNET Japanブログでも「衝撃のコンテンツトレンド」を執筆している志村一隆氏が、アメリカで絶大な人気を誇る番組配信サイトの「Hulu(フールー)」を始め、各種のサービスを紹介し、人気の理由や今後の展開を考察する。好きなコンテンツを簡単に共有できる事が、キーポイントのようだ。また、誰でもが映像素材の発信者になれる点にも着目し、制作側に警鐘を鳴らす。
と、ここまででは、テレビ業界人向けの本かと思うが、アメリカのテレビにはシーズンオフがあることや、面白い形のテレビがあることなど、随所に織り交ぜられたトリビア的なネタは一般人の筆者にも楽しめた。一視聴者としては、番組を楽しむための選択肢が広がるのは歓迎だ。ぜひともテレビ業界の方には本書を読み、アメリカで成功している便利なサービスを日本でも取り入れる積極的な姿勢を期待したい。
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